きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

もう一つの人馬一体

2月8日は、江田 照男 騎手の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

ロンジン社のスポンサードによるサラブレッド世界ランキング王者のアロゲートが引退した現在、世界の頂点に立っているのは南十字星の女帝ウィンクスです。そのレーティングは132ポンド。凱旋門賞とキングジョージを圧勝した同じ牝馬のエネイブルが128ポンドですから、いかに高く評価されているかが分かります。それもそのはず、彼女は現在22連勝中で、その内G1が15勝という破格の実績を残しています。G1通算15勝は、競馬史上に燦然と輝く破天荒な女傑ゼニヤッタの13勝、ヨーロッパ記録保持者のゴルディコヴァの14勝を超え、サザンクロス超特急ブラックキャビアに並ぶ大記録です。主要競馬国での最高記録は生涯83戦39勝と走りに走り続け「走る労働者」と親しまれたジョンヘンリーの16勝ですが、もう背中に接近するところまで来ています。

その世界タイ記録のかかった一戦が来月初旬にオーストラリアのランドウィック競馬場で行われるG1チッピングノートンSです。実は彼女は年明けの秋シーズンをG2アポロSから始動させるのが例年のルーティンでした。ところが主戦のヒュー・ボウマン騎手が騎乗停止で乗れなくなり、誰が代役を勤めるかが注目されていました。彼は昨年、常勝将軍ライアン・ムーアを退けて世界No. 1ジョッキーに輝いた腕達者であるのは、ジャパンCのシュヴァルグランでダービー馬レイデオロ、2年連続年度代表馬キタサンブラックを破った人馬一体の手綱さばきでご承知の通りです。

「彼はウィンクスの非常に重要な一部だ」というのがクリス・ウォーラー調教師の下した結論でした。世間では「ウィンクス・ライダー」の二つ名でボウマン騎手を呼びますが、彼はウィンクスの背にまたがるジョッキーという役割を超越して、ウィンクスそのものだとウォーラー師は判断したのです。人馬一体は褒め言葉ですが、この人馬一体はそれとは異なって存在自体を現しています。ボウマン以外が乗るウィンクスはウィンクスではない、とウォーラー師は断言しているわけです。この言葉に奮い立たない人間はいないでしょう。素晴らしいレースを見せてくれるに違いありません。

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