きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ドーハの栄光

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カタールのドーハといえば、もう四半世紀も前の1993年、サッカーのワールドCアジア予選でそれまでトップに立っていた日本代表が、最終戦のロスタイムで奇跡的な同点ゴールを決められこの瞬間に予選落ち、天国から地獄へ、選手はグラウンドに崩れ落ち日本中が茫然自失した「ドーハの悲劇」でご記憶の方も多いのではないでしょうか。競馬でいえば、エルコンドルパサーが凱旋門賞で2着に頑張って世界を驚かせたのは、その6年後のことですから日本のスポーツ全体が世界の高い壁に苦しんでいた時代でした。今ではサッカーはワールドCの常連であり、凱旋門賞をはじめとする世界のビッグレースに日本馬の姿があるのはごく自然に感じられる時代になりました。

ドーハの歳末、先月30日にカタールG1カタールダービーが行われました。勝ったのはイタリア生産・調教馬のマクマホン。イタリアダービー馬でもあります。生粋のマカロニホースですが、オーナーは日本人で「トーセン」の冠名でお馴染みの島川隆哉さんです。同じ二文字でも「悲劇」から「栄光」へと四半世紀ぶりに劇的に変換されました。このとろこオーストラリアに移籍させたトーセンスターダムがG1を2勝したり、短距離の世界最高賞金レース・ジエレベストでは自家生産馬でトーセンファントム産駒のブレイブスマッシュがスプリント王国オーストラリアの強豪相手に3着の大健闘を見せて世界を驚かせました。今や日の丸を背負うホースマンの一人です。

マクマホンの父ラモンティはイタリアからイギリスに移籍して、クイーンアンS、サセックスS、クイーンエリザベス2世Sと超一級G1を勝ちまくった名マイラーで、その父マルティノアロンソは名フィリーサイアーのマルジュほとんど唯一の後継馬です。サトノクラウンがこの希少な血の伝道師になれるか注目されますが、マクマホンもまた種牡馬として貴重な存在であることは間違いないでしょう。島川さんは去年だけで2つのダービーオーナーになる快挙を成し遂げましたが、日本ダービーは不思議なことにまだ勝っていません。いつかマクマホンの血でダービー制覇、「ドーハの栄光」から「東京の歓喜」へと繋がるドラマが見られると良いですね。

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