きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

今年は一強?

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現時点で今年の凱旋門賞は、2400m級のG1を圧倒的なパフォーマンスで4連勝中のエネイブル《一強》のムードが充満しています。「先行できるスピードを持ち、道中で集中力を切らさない賢さがあり、追って味があり、なおかつ切れる」最高のサラブレッドだと主戦のフランキー・デットーリ騎手は賞賛を惜しみません。事実、英オークスが5馬身、愛オークスは5馬身半、牡馬の強豪相手にキングジョージでは4馬身半、ヨークシャーオークスは押し出されるようにハナに立ち5馬身の逃げ切りと手が付けられない強さです。

これに対してライバルの姿がどうにも不透明です。キングジョージ2着を挟んでG1を2勝しているユリシーズは、晩成の大器と早くから本格化を待たれていた素質馬で、ようやく期待に応える成長を見せています。ところがサー・マイケル・スタウト調教師は、早くから彼の今季の大目標をアメリカ遠征のBCターフに置いており、シャンティイに姿を現したとしてもメイチの仕上げといくかどうか?このユリシーズが現在2番人気で、それに次いで日本のサトノダイヤモンド、フランケルのクラックスマン、3歳女王ウィンターが3番人気タイで追っている展開です。ダイヤモンドについては百も二百もご承知でしょうが、かつて凱旋門賞に遠征した日本馬では、春先からフランスに渡ったエルコンドルパサーを別としても、どの馬よりも本気度が感じられる中間です。すべてをこの大一番に賭けている気配が伝わってきます。

本当のライバル関係は、来月中旬に本番と同コース同距離で行われる三大トライアルレース、サトノダイヤモンドの登録もある古馬のG2フォア賞、3歳のG2ニエル賞、牝馬のG1ヴェルメイユ賞が終わってみないと輪郭が見えないのですが、ここへ来てクラックスマンが急浮上してきました。前走は三冠最後の関門セントレジャーへのステップレースとして有名なG2グレートヴォルティジュールSを使われたのですが、ナント6馬身差の大圧勝!春先は順調さを欠きながら英ダービー3着、愛ダービー2着と高い能力の片鱗は見せてきた馬です。名誉あるクラシックレースであるセントレジャーへ行けば「勝てるかもしれないが、彼にとって不可欠のプログラムではない」とジョン・ゴスデン調教師は凱旋門賞ロードに意欲を隠しません。ただ悩みの種は鞍上。主戦デットーリ騎手が同厩舎のエネイブルと被るからです。誰を鞍上に迎えるか?ゴスデン師の試行錯誤が続きそうです。

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