きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

吹き荒れる世代交代の風

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ヨーロッパでは2701m以上の距離は、長距離の概念を超えているという意味でエクステンデッド(長い)のカテゴリーに分類されます。俗にマラソンレースと呼ばれることも多いようです。ご存じのようにこのカテゴリーは、競馬がどんどんスピード化されていく中で徐々に存在感を失い、今ではイギリス・アイルランドを合わせてもG1レースは、ロイヤルアスコットのゴールドCと愛セントレジャーだけです。かつてはこのゴールドC約4000mとグッドウッドC約3200m、ドンカスターC約3600mは長距離三冠の尊称で親しまれ非常に人気のあるシリーズだったそうです。打ち続く恒常的な地盤沈下から過去の人気番組を復活させようと、今年からグッドウッドCがG1昇格を果たしました。肩身の狭い思いをしていたマラソンランナーには朗報です。

第1回のG1グッドウッドCは、ヨーロッパ三強のうちアイルランドのオーダーオブセントジョージ、フランスのヴァジラバドが体調整わず回避して、イギリスのビッグオレンジだけの出走となりました。この馬は前走ゴールドCで宿敵オーダーオブセントジョージを倒した6歳の充実盛りで、グッドウッドCは連勝中で記念すべきG1事始めで3連覇の偉業達成に挑みます。実績的にも、現在の充実度も飛び抜けた存在で圧倒的人気もうなずけます。

そのビッグオレンジが貫禄の逃げでレースを創りました。王者らしく威風堂々逃げ込みを図るところへ、しかし伏兵が直線インから忍び寄り王者に襲いかかります。最後は約54.4キロと約60.3キロ、6キロの斤量差もあったにせよ伏兵が王者の1.75馬身先に出ていました。勝利の凱歌を上げたのはストラディヴァリウスという3歳馬、前走でロイヤルアスコットのG2クイーンズヴァーズを勝ったばかりの上がり馬でした。先週末のキングジョージでも並み居る古豪を相手に3歳牝馬のエネイブルが大楽勝しましたが、どうやらヨーロッパには世代交代の風が吹き始めているのでしょうか?今夜のグッドウッド競馬場はマイル頂上戦のG1サセックスS。古馬チャンピオンのリブチェスターに若武者チャーチルが挑みます。さてこちらも世代交代成るのか?注目の一戦です。

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