きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ジャイアントキリング劇場

6月7日は高柳大輔調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

今週は日本からエピカリスが遠征する米三冠・最終関門のベルモントSが開催され、日本でも馬券が発売されます。昨年はラニが遠征して三冠すべてに出走し、9着・5着・3着と尻上がりの好成績を残す快挙を成し遂げています。ベルモントの3着も大健闘ですが、向こうの馬でもそうたくさんはいない三冠皆勤というのは、褒めてあげて良い偉業だと思います。このラニの頑張りが、日本調教馬の資質の高さを見直すキッカケとなり、今年はケンタッキーダービー優先出走権付きのプレップレース(前哨戦)日本ラウンドが実施されるようになりました。このチケットをゲットしたのがエピカリスで、彼は正規のプレップであるUAEラウンドでも僅差の2着に激走して二重に出走権を得ました。ケンタッキーダービーは調整が間に合わず見送りましたが、ある意味でこれは見識だと思います。

というのも、三冠皆勤馬がほんの一握りになる状況からも、5週間のうちに3戦を戦い切るアメリカンスタイルの三冠レースは、端的に言って若いサラブレッドたちに激しい消耗を強いるサバイバル戦だからです。とくに最終関門のベルモントSは、ダート2400mと向こうでは珍しい長距離で行われます。カテゴリー的には長距離を超えるマラソンレースに位置付けられています。このサバイバルを生き抜く難しさと距離の壁ゆえ、これまで77年の三冠馬アファームド以来、一昨年の三冠馬アメリカンファラオまで、37年間に我がサンデーサイレンスを含む11頭の二冠馬が三冠を目前にジャイアントキリング(本命倒し)の餌食になっています。ベルモントパークの砂には無念の涙がしみ込んでいるようです。

ベルモントSの関門は、持って生まれた素質や鍛え抜かれた底力以上に、いかにフレッシュな状態でレースに臨めるかにあるようです。そういう意味ではエピカリスは極めて理想に近い調整過程を経て海を渡ったと言えそうです。フレッシュさだけなら出走馬中一番かもしれません。父系祖父サンデーサイレンスの無念を晴らすというドラマの舞台でもあります。それにしても、母系祖母の父マルゼンスキーが日本のダービーにすら願っても思いが叶わなかった悲劇を思うと、日本の競馬も大きく開けてきたものです。隔世の感があります。エピカリスに重荷を背負わせるつもりはないのですが、サンデーサイレンスやマルゼンスキーの無念の涙や日本人ホースマンの思いと一緒に走ってくれたらと思います。

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