きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ケンタッキーダービーへの道【後】

ようこそいらっしゃいませ。

日曜東京のOPヒヤシンスSには、日本馬のために用意されたたった一枚のケンタッキーダービー切符を目指して、グレードレースでもお目にかかれないような豪華絢爛な顔ぶれが揃いました。排外的な言動が目立つトランプ大統領とは真逆な開放的で自由平等なアメリカ本来の姿がそこにあります。「あらゆるスポーツの中でもっとも興奮する二分間」である伝統あるレースを世界に開放するのは、自由で平等な参加機会にこそ国民的理念であるアメリカンドリームを支える思想が息づいているからです。素質を秘め可能性のあるものには広々と門戸を開くお国柄です。日本で新馬を勝っただけのカジノドライヴを格式あるG2ピーターパンSに両手を挙げて迎え入れたこともありました。日本の仕組みなら真っ先に除外対象です。主催者であるチャーチルダウンズの関係者、すべてのアメリカのホースマンに感謝します。

新装ヒヤシンスSの見どころは、大物エピカリスの豪快な競馬っぷりでしょうか?ご存じのようにデビューから6馬身、7馬身と差を広げ、前走G3北海道2歳優駿では15馬身以上と推定される破天荒なレースを披露しました。スマートファルコン、エスポワールシチー、コパノリッキーなど今やゴールドアリュール系と言える一大勢力を築き上げている日本が誇るダート名門一族の出です。母系も鎌田牧場が育て上げ日高の地に根を張ってきたコランディアに遡る牝系です。こういう馬が胸を張って海を渡るのは嬉しくなりますね。

ところがエピカリス、ここを勝って50ポイントを獲得してもケンタッキー切符当確とはなりません。2連勝中のモンサンレガーメが昨秋のカトレア賞を勝って既に40ポイントを得ており、今回2着でも20ポイントが加算され、エピカリスを上回ります。父のケイムホームはアメリカの活躍馬で、馬名通りに息子が故郷に錦を飾ることになれば、向こうのファンは大喜びするでしょうね。エピカリス陣営は万全を期してUAEダービーにも登録し、万が一に備えています。昨年ラニはここを勝ってチャーチルダウンズに乗り込んでいます。何だかあっという間に選択肢が広がっているのには少し驚かされます。ともあれ、ヒヤシンスSの重賞格上げの声が湧き起こるような白熱のレースを期待したいものです。

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