きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

1枠1番の逃亡者

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今週日曜東京競馬場で行われる天皇賞(秋)の枠順が決まりました。今年は15頭が出走。モーリスの中距離挑戦にエイシンヒカリの凱旋と、この両馬の激突を中心に注目集める天皇賞(秋)となっています。札幌記念からの出走となるモーリスは5枠8番、海外遠征からの凱旋となるエイシンヒカリは1枠1番となりました。

逃げ馬、1枠1番、武豊騎手、天皇賞(秋)。このフレーズから、光の中を駆け抜けた逃亡者を思い出すファンも多いのではないでしょうか。1998年の天皇賞(秋)で1枠1番に入りオッズ単勝1.2倍。前哨戦で無敗の外国産馬2頭をあっさりと置き去りにしてレースに駒を進めたサイレンススズカに集まった期待は、勝つことは当然としてあとはどれほどのタイムでゴールするかでした。府中に魔物が棲んでいる、そんな嘆きも懐かしく感じます。当時の天皇賞(秋)は1番人気馬が毎年のように敗れ続け、サイレンススズカもまたまるで魔物に飲み込まれていったかのように彼方へと駆け抜けていきました。

エイシンヒカリは今年6月にイスパーン賞を10馬身ちぎって優勝し、世界競走馬ランキングで単独世界一となりました。平成の逃亡者に与えられた1枠1番。偶然なのでしょうが、どこか運命のようにも感じます。レーススタートから先手を奪って逃走。気がつけば2番手以下とは10馬身も15馬身も差が開き、どこまでちぎるのだろうと夢見たあの日。あの未完に終わった物語のつづきをエイシンヒカリは描くことができるでしょうか。

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