きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

悲劇を超えて

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先週にもちょっとお伝えしましたが、欧米ではこの時期、リゾート地を舞台とした夏競馬が華やかに開催されます。先週末のフランス・ドーヴィルは真夏の風物詩として親しまれているスプリントG1モーリスドゲスト賞が行われています。宿願のパート1国昇格、売り上げも好調な伸びを見せ続け、いま世界で一番勢いのある香港競馬を象徴するようにロイヤルアスコットG1ダイヤモンドジュビリーS2着から、ドーヴァー海峡を越えてこのレースに参戦したゴールドファンは、名手クリストフ・スミヨンの騎乗もあって1番人気に推され、極東の競馬新興国の実力をヨーロッパに認めさせました。

モーリスドゲスト賞と言えば、日本がまだパート2国だった98年にシーキングザパールが日本調教馬が初めて勝利したヨーロッパG1として記憶され、その翌週のジャックルマロワ賞制覇のタイキシャトルとともに忘れることのできない記念碑となっています。ヨーロッパを驚愕させ、震撼させた両馬の快挙が9年後のパート1国昇格に大きな貢献を果たしたのは間違いありません。タイキシャトルが負かしたケープクロスが、後にシーザスターズやゴールデンフォルンといったエプソムダービー&凱旋門賞馬を生んだり、日本ダービー馬ロジユニヴァースの母父として影響力を振るうことになるのですから、単に恵まれての勝利ではなくハイレベルな戦いであったのには、誰も異論を挟めません。シーキングザパールも母となってシーキングザダイヤを出し、彼は南米でG1馬を続々と輩出しています。

レースは、そのダイヤモンドジュビリーSで3着に健闘した地元のサインズオブブレッシングが逃げを打ち、ラスト1ハロンの勝負どころで仕掛けたスミヨンのゴールドファンが落馬。そのままサインズオブブレッシングが逃げ切る波乱となりました。ゴールドファンは骨折で予後不良となり異郷の地ドーヴィルに客死する悲劇となります。ゴールドファンは日本では、セレクトセールに上場され今年デビューの年を迎えたフランケル初年度産駒のファヴォーラの半兄としても有名ですが、異郷に客死した兄の分まで頑張ってほしいと期待が膨らみます。

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