きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ラニのライバルたち

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昨日に続いてアメリカ競馬の話題です。先週末モンマスパーク競馬場では、三冠レース最終関門ベルモントSを出走回避したケンタッキーダービー馬ナイクィストと1番人気で11着に惨敗したプリークネスS馬エグザジェレーターが復活を賭けて直接対決に挑むハスケル招待Sが行われました。エグザジェレーターは日本馬のラニを除けば、三冠レースすべてに皆勤した唯一の馬です。ラニが9着、5着、3着と尻上がりを絵に描いたような上昇カーブを示したのに対して、ベルモントSの惨敗はいかにも不本意です。ナイクィストもケンタッキーダービーまで8戦8勝と無敵を誇った馬ですから、それぞれこの一番にかける思いは、並々ならぬものがあったはずです。今季のBCは見送って、いったん日本に帰国したラニの今後を占う上でも必見の一番と言えそうです。

モンパスパークは数年前に当協会研修でお世話になった競馬場です。大都市ニューヨークに隣接して立地し、ベルモントやアケダクトなどビッグネーム競馬場とは厳しい競合関係にありますから、集客にも大変な苦労を重ねてており、競馬改革に取り組む姿勢を学ばせていただきました。そのモンパスパーク最大の集客の目玉がハスケル招待Sです。過去には昨日も少しご紹介した女傑レイチェルアレクサンドラや三冠馬アメリカンファラオの招致にも成功し、レースのステイタスを一段と高めました。ここをステップに“真夏のダービー”トラヴァーズSを経てBCクラシックへと続く3歳馬にとっての最重要ステップに位置付けられています。たくさんのファンを呼び、競馬を盛り上げるのは、やはりスターホースが勢ぞろいした格式正しい伝統あるレースに勝るものはありません。

今回のハスケル招待Sは、エグザジェレーターが大出遅れ、ナイクィストが先手を奪ってマイペースの逃げを打ちスタートからドキドキの波乱モードとなりました。しかし日本でもお馴染みのケント・デザーモ騎手は、ベテランらしく慌てず騒がずジワジワと差を詰めて直線勝負に持ち込み、ラスト1ハロンで一気に伸びて全馬をねじ伏せました。ナイクィストは4着に粘るのが精一杯。父アンクルモーにもその傾向があったように、早熟血統だったのでしょうか?春とは一変した成長力勝負が始まったようです。エグザジェレーターの父カーリンは、ハスケル招待こそ3着に敗れましたが、この一叩きで本格化、BCクラシック、ドバイワールドCを連勝してチャンピオンホースに上り詰めています。奥の深い成長力に富んだ血脈です。まだ一段、二段の成長の余地がありそうなラニも含めて、ダート頂上戦線も楽しみが膨らみそうです。

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