きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

インヴィンシブルスピリット系

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セレクトセールが史上空前の大盛況の内に幕を閉じました。開催直前にイギリスがEU離脱を決めるなど不透明感が漂う経済情勢でしたが、大成功はご同慶の至りです。不動の四番打者として最強のポイントゲッターぶりを遺憾なく見せつけたスラッガー・ディープインパクトにはただ呆れるばかりでしたが、昨日の当歳馬セール、サンデーサイレンスを含まない異系の血として注目した海外種牡馬の目玉はインヴィンシブルスピリットとキングマン親仔でした。

昨今のヨーロッパで非常に勢いのある一族です。インヴィンシブルスピリットはダンチヒ系グリーンデザートの血で競走馬としてはスプリンターとして活躍しました。種牡馬としても持ち前のスピードを生かして、非常に勝ち上がり津の高いアベレージヒッターとして存在感を増しています。母ラファは仏オークスなど7戦5勝2着2回と底を見せないまま繁殖に上がった名牝で、インヴィンシブルスピリットの半弟コディアクは兄から2歳リーディングサイヤーの座を奪い取り、不動の2歳チャンピオンとして全欧に名を轟かせています。その一方で今年は産駒のメイソンが現在のところまで、出走産駒数が多いこともあるのですが既に8頭が勝ち上がり通算9勝で6頭で6勝のフランケルをリード、新種牡馬リーディングで首位に立っています。フランケルも凄いのですが、インヴィンシブルスピリット系の早い時期からの完成度の高さは群を抜いています。

単なる早熟で終わらず、優秀な産駒は牝馬のムーンライトクラウドのようにスプリントで絶対的な強みを発揮するかと思えば、マイルでも脚を溜められたときの瞬発力は群を抜いたキレを披露します。インヴィンシブルスピリット産駒は、JRAでも既に10頭がデビューして7頭が勝ち上がり11勝をマークしています。内8勝を芝で上げていますから、ダートに偏りがちな外国産馬としては日本の芝適性も十分に備えています。その後継エース格と目されるのがキングマン。フランケルと同じくサウジアラビアの王族カリド・アブデューラ殿下のオーナーブリーダー馬で、“フランケル2世”の呼び声に違わず、英2000ギニーでトリッキーなレース展開に戸惑って不覚を喫した以外は8戦7勝と完璧な実力を見せて年度代表馬に選ばられています。税込み9500万円余りの高値を付けた母マンビアの仔は初年度産駒にあたり、直線で披露してくれるだろう爆発力は今からワクワクします。フランケルに見られるように、海外では人気種牡馬でも100頭前後の種付けが普通で、その産駒がセレクト上場となるとハードルも高くなるのですが、血の多様性を担保し日本競馬の土壌そのものをより豊かに育てていくためにも、こうした実験をますます意欲的に実施してほしいと思いました。

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