きょうの蹄音競馬にまつわるちょっといい話

2016.6.9

ベルモント伝説

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その歴史が書き始められたのは43年前。ケンタッキーダービーとプリークネスSをともにレコードで制した稀代の快速馬セクレタリアトが、真っ赤に燃えるような“ビッグレッド”とあだ名された栗毛の馬体をベルモント競馬場に現したそのときです。彼はスピードに任せて珍しく逃げの手に出て次々と脱落するライバルを尻目に、従来の記録を2秒以上も短縮するレコード2分24秒0で悠々とゴールします。ー先日のマカヒキの日本ダービーと同タイムです。ダートでこの時計を出されては誰もついていけません。31馬身の破天荒な大差がついていました。

その4年後、シアトルスルーがセクレタリアトもできなかった無傷の三冠を達成します。この負けなかった三冠馬シアトルスルーと異次元の怪物セクレタリアトの娘との間に誕生した馬がA.P.インディです。三冠馬同士の配合から生まれた彼はたちまち国民的英雄に祭り上げられますが、最初の二冠は故障でリタイア、最後のベルモントSで父と祖父から伝えられたヒーローの血を爆発させベルモントSを制し、世代最強を証明したばかりか年度代表馬に選出され、アメリカンサラブレッドの頂点に君臨します。

彼は種牡馬としても大成功しますが、血統ゆかりのベルモントSを勝ったのは牝馬のラグストゥリッチーズ。当時の最強馬カーリンを封じ込んでの力強い堂々たる勝利でした。カジノドライヴのお姉さんです。弟はA.P.インディの父系孫でベルモントを目指しますが、レース直前にアクシデントで出走取り消し、長兄ジャジル、姉ラグストゥに続く兄姉弟ベルモント3連覇は夢と消えて、日本のみならず全米のファンを落胆させました。しかしベルモント血統の灯火は消えず、インディの産駒プルピットを通じたタピット産駒のトゥナリストが一昨年のベルモントを快勝しています。

同じタピット産駒のラニに千載一遇の好機が巡ってきました。今年もハードな三冠レースすべてを乗り切ったのは、プリークネスの覇者エグザジェレーターとラニだけ。このサバイバルを生き抜いてきたことだけでも素晴らしいことです。ライバルはあのカーリンの息子です。彼は父の無念を晴らせるのでしょうか?それともセクレタリアトから始まったベルモントの伝説に新たな1頁が書き加えられるのでしょうか?