きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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華やかな凱旋門賞ウィークエンドの裏側では様々な人間ドラマが渦巻いています。大一番前日にダニエルウィルデンシュタイン賞というG2レースが組まれています。このウィークエンドには3歳以上のマイルG1が存在しないため、カテゴリー中でもっとも格上になります。美術商としても有名なオーナーブリーダーの故ダニエル・ウィルデンシュタイン氏の競馬への功績を顕彰して設けられた今年12回目の重賞レースです。今回の勝ち馬はソロウで馬主はウィルデンシュタイン一族でした。偉大な父の名を冠したレースでウィナーズサークルに立つのは、きっと感慨深いものがあるのでしょうね。ウィルデンシュタイン家は東京でも画廊を経営するなど親日家として知られ、古くは快速ドン、リボー系ステイヤのジムフレンチなど良質な種牡馬を来日させてくれました。最近ではディープインパクトにことのほか熱心でフランスから自分の牝馬を北海道に送り込んで種付けするほどです。生産馬からG3アレフランス賞のアクアマリンなど既に重賞勝ち馬を出しています。この先も楽しみですね。

話は戻りますが、ちなみにソロウのトレーナーはフレディ・ヘッド調教師。トレヴのクリスティーヌ・ヘッド=マックレー調教師のお兄さんです。クリスティーナさんは2歳牡馬のチャンピオン決定戦ジャンリュックラガルデール賞を繰り上がりとはいえ、フルマストで勝ち、二重の喜びとなりました。お祖父さんが騎手、両親がオーナーブリーダー、ヘッドさんは騎手としてミエスク、調教師としてはゴルディコヴァと歴史的名牝に携わっています。三代住んで初めて江戸っ子と言われますが、ウィルデンシュタイン家といい、ヘッドファミリーといい、父から子へ、子から孫へと代を重ねる時間の流れの重みを感じさせます。もっとも向こうでは爺さんが野球ファンなら子も孫もそう、サッカーであれ、競馬であれ、趣味が家族の絆を繋ぐ大事な存在である伝統があります。そういう意味では名だたる名家でも肩肘張らずにごく自然に競馬の楽しみが継承されているのでしょうね。ちょっと羨ましいです。

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