きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

アメリカンヒーロー

ようこそいらっしゃいませ。

一足先に選出されたヨーロッパのカルティエ賞、日本のJRA賞と並んでアメリカの年間チャンピオンを選出するエクリプス賞が先週末に決定しました。年度代表馬はアメリカンファラオが誰一人異論ももなく選ばれています。37年ぶりの三冠という偉業に加えて北米最高峰レース・ブリーダーズクラシックも楽勝したのですから当然の受賞です。父が名馬アンブライドルドから昨年まで日本にいたエンパイアメーカー、パイオニアオブザナイルとアメリカの誇り・ミスタプロスペクターの正統の血を引く一族で、母父は世界中で日に日に存在感を増しつつあるこれもアメリカの主砲・ストームキャットから出たヤンキージェントルマンという血統です。名匠ボブ・バファート調教師に鍛えられ、氏も育ちも馬名までもがアメリカンなニューヒーローが誕生しました。今年から種牡馬生活に入りますが、さらにヒーローからヒーローが生まれるようなドラマを期待したいものです。

今回の受賞でクローズアップされたのはストームキャット系の増殖ぶりです。母父としてアメリカンファラオもそうですが、古馬牡馬チャンピオンのオナーコードも出しました。もちろん父系も順調に枝葉を伸ばしており、古馬牝馬チャンピオンのビホルダー、芝部門の牝馬チャンピオン・テピンと印象深い活躍を見せてくれました。シーズン5戦5勝のビホルダーは女王としての風格を感じさせます。現在は日高の優駿SSに供用されているへニーヒューズの産駒です。へニーヒューズは日本での初年度産駒は明け1歳になりました。過去の輸入産駒も優秀でG1朝日杯フューチュリティSのアジアエクスプレスを筆頭に重賞馬3頭を輩出しています。仕上がり早で知られるストームキャット系でも際立った早熟性を示すヘネシーの系統ですが、息長くトップクラスで活躍を続けるビホルダーの出現は、この新進種牡馬に新たな魅力を付け加えたようです。今年のセレクトセールなどの注目株かもしれません。

種付け料50万ドルと当時の世界最高を誇ったストームキャットが最上質の牝馬を集めたのは当然ですが、その牝馬たちがさらに良馬の裾野を拡げているという構図です。日本でもキズナを筆頭にディープインパクトとのニックスがとくに有名ですが、今後も目を離せない血統であるのは確かでしょう。
30歳と長寿だったストームキャットは、ラストクロップがまだ7歳ですから、ブルードメアサイヤーとして末長い活躍が期待できます。父系の繁栄も前述の通りで、過去の馬とは言わせません。現在進行形で大山脈創造中。今回のエクリプス賞の結果は、ほんの通過点かもしれません。

×