きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

天下分けめの一戦

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今週は世界の強豪が今年の総決算に挑むべく香港に集います。1200mのスプリント、1600mのマイル、2000mのカップ、2400mのヴァーズと2ハロン刻みの4カテゴリーでそれぞれチャンピオンの座を競う趣向です。これらのカテゴリーは世界標準と言って良いのでしょうが、その意味でも分かり易い番組編成になっています。2年連続して凱旋門賞2着の実力派フリントシャーが姿を見せるヴァーズ、未完の大器と騒がれロイヤルアスコットのプリンスオブウェールズSでついに悲願のG1制覇を成し遂げたフリーイーグルがラストランを迎えるカップなど注目レースは多いのですが、日本からはヴァーズを除く3つのカテゴリーに選りすぐりの計10頭がチャレンジしますが、世界の目がもっとも熱く注がれるのは香港マイルでしょうか。

彗星の如く現れた日本の天才マイラー・モーリス、その堀調教師も『地元の怪物』と認めるエイブルフレンドが激突するからです。エイブルがどれくらい強いかというと、彼はレーティング125ポンドで世界4位。彼の上となると、三冠馬アメリカンファラオ、ダービー&凱旋門賞馬ゴールデンホルン、女傑トレヴの3頭だけです。その点、少し過大評価という気もするのですが、6連勝と突っ走った昨年から今年前半までの強さは目を見張るものがありました。どんな位置からも力強く伸びてくる末脚は問答無用の斬れ味で剣豪の太刀さばきを思わせる豪快かつ爽快さでファンをしびれさせています。ーロイヤルアスコット遠征後はやや精彩を欠く印象ですが、ホームコースとなれば底力全開の場面も十分に考えられます。モーリスの凛々しい若武者ぶりと重ね合わせて、香港に場所を移した巌流島の闘いみたいなイメージすら湧いてきます。

年末とあって年度代表馬の行方が気になるのですが、モーリスやスプリント出走のストレイトガールが勝てば、今年G1・3勝目となりラブリーデイやドゥラメンテの2勝を上回ることになります。そうなればなったで今年のフィナーレ・有馬記念がますます熱い戦いにならざるを得ないわけですから、その意味では天下分けめの一戦ともなります。今週末、ぜひ海の向こうにもご注目を。

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