きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

チャンピオンズデーの復権

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競馬のさらなる興隆の救世主として大きな期待を背負って創設され、歴史的名馬フランケルとの幸福な出会いによって最高の盛り上がりを実現しながら、その後は一流馬が出走を躊躇するような道悪が常態というアスコット特有のハードルに妨げられる一方で、多様な他スポーツや他ならぬ競馬の障害人気との厳しい競合を強いられるなどの要因で今季はテレビ視聴率を大きくダウンさせたブリテッシュ・チャンピオンズデー。視聴率がすべてではないでしょうが、深刻な局面に陥っているのは事実です。アメリカのブリーダーズCデー、フランスのロンシャンウィークエンド、ドバイミーティング、香港国際競走デーなど各カテゴリーの頂上戦G1を一挙に行うというファンの夢を現実にしたスタイルの最高峰と考えられていた競馬の祖国イギリスの一大イベントが危機に瀕しています。

以前からドーム競馬場に改修したらというプランが出されています。天候にかかわらず常に快適なコンディションで競馬できれば、一流馬も迷うことなく出走できるでしょう。しかしそれには莫大な費用が必要になります。それ以前に『できるだけ自然のままのコースで』というイギリス流のスポーツ理念を大きく裏切ることになります。ゴルフなどイギリス発祥のスポーツの多くは、例えばセントアンドリュースなどのように、ありのままの自然に溶け込んだコース設計が尊ばれます。競馬も同じで、時代ごとに最小限の改修は行っても、基本は300年前にアン女王がアスコットの丘陵に競馬場を初めて拓いたときの景観を大事にしようと努めます。レースのスリリングな面白さと馬の健康を人工的に維持しようとする日本とはそもそも発想の根っこが違うようです。

世界競馬のレーシングカレンダーも混み合ってきて、ニッチもサッチも行かない渋滞状況が現実の姿です。日程変更も簡単ではありません。大レースなら大レースほどそうです。ダービーを夏休みの間に、有馬記念をゴールデンウィークにやると言ったらファンは戸惑うでしょう。それはさておき、これだけ混み合ってくると、世界規模でレーシングカレンダーを一度シャッフルして、改めて一流馬が出走しやすい番組編成を目指すべきなのかもしれません。一流馬がこぞって覇を競うこと競馬の原点なのですから。G1に限らず、条件戦でも強い馬が集まりやすい環境や条件はあるはずです。最初の第1レースから最終まで面白い競馬を見せるために、これは日本だけでもできることですね。

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