きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

サラトガの夢

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海の向こうでは夏の間はリゾート競馬がメインになります。フランスならドーヴィル、アメリカだとサラトガがその舞台。どちらも世の羨望を集める高級リゾート地として知られ、セレブたちがちょっとカジュアルな気分で一夏を過ごす街です。滞在競馬ですから、厩舎もあれば調教場も整備されていて、何より人と馬との距離が短いのが魅力ですね。さて、今年のサラトガは先々の夢がいっぱい詰まったレースが行われるかと思えば、ヒーロー、ヒロインにまさかの土がつく悪夢のような波乱もありました。今日と明日、夢と悪夢の狭間が交錯したサラトガ・
サマーフェスティバルのお話をさせてください。

サラトガの夏は、近年のスーパーヒロイン・レイチェルアレクサンドラの娘レイチェルヴァレンティーナが鮮やかに初舞台を飾って幕を開けました。開催後半にはデビューが遅れていた兄のジェスズドリームが勝利の揃い踏み。アメリカの競馬ファンには歓喜渦巻くビューティフルサマーになりました。世界有数のワイン醸造家として財を成したジェス・ジャクソンさんのオーナーブリーダーホースで、ことにレイチェルの初仔ジェスズドリームは、馬名からも想像が付くように、母レイチェルはもちろん父のカーリンもジェスさんの勝負服で勝ちまくり2頭で3年連続の年度代表馬に輝いています。掛け値なしに偉大なホースマンの夢の結晶のような血統です。妹は来春のクラシックを、兄は遅れてきた大物としてアメリカンドリームを実らせてくれると盛り上がりますね。それだけのスター性を生まれながらに持っているアイドルホースたちです。

そのサラトガはアメリカ三冠=トリプルクラウンに対する牝馬三冠=トリプルティアラの主戦場としても有名です。今年は名門トッド・プレッチャー厩舎の新星キュラリナがマイルのエイコーンS、9ハロンのCCAオークスを連勝して、最後の関門10ハロンのアラバマSにー挑みました。しかしエンベリッシュザレースという逃げ馬を捉えきれず3着と思いがけない敗退。若い牝馬が短期間にマイルから10ハロンまでを克服するのは非常な難事なんでしょう。勝ち馬の父はプレッチャー厩舎のダービー馬スーパーセイヴァーでしたから、トッド師の心境もさぞや複雑なものだったでしょうね。鞍上はベネズエラ出身のハビエル・カステリャーノ騎手でしたが、このベテランジョッキー、この後とんでもない悪夢の立役者になってしまいます。サラトガの悪夢の続きは明日ご報告することにします。

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