きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

2歳馬VS古馬

ヨーロッパやオーストラリアのスプリント戦では、いわゆる“オールエイジ”、すべての馬に門戸が開放されているレースが存在します。明後日のヨーク競馬場で開かれるG1ナンソープS5Fでいえば、牝馬、牡馬、せん馬、デビュー間もない2歳馬から歴戦の8歳馬まで、バラエティ豊かな顔ぶれが揃っています。そもそもスピードは天賦の才と考えられ、優れた素質に恵まれればキャリアの浅い若駒でも経験豊富なベテランにも十分に太刀打ちできると判断されているのでしょう。

今年はアカプルコという2歳牝馬が人気の中心になっているようです。ロイヤルアスコットではすっかりお馴染みなったアメリカのウェズリー・ワード厩舎の管理馬です。血統も父系がストームキャットからヘネシー、今は日本にいるヨハネスブルグと早熟の血を繋がれたスキャットダディ、母父が日本にいたこともあるミスプロ系のエンドスウィープで見るからにアメリカンな配合になっています。仕上がり早い傾向の強いアメリカ血統でも早い時期に飛びっきりの完成度の高さを示します。

この健気な美少女ランナーを迎え撃つ欧州勢は、目下スプリントG1を3連勝中でチャンピオンとしての存在感を日に日に増しているムーハーラーこそ不在なのですが、同馬主の上がり馬ムスミールが代役を努め、このレースを既に2回勝っているソウルパワーは今季も5つ目のG1勝利を積み重ねて8歳せん馬とは思えない充実ぶりです。展開に左右されるタイプで安定感は一息ですが力に衰えはないようです。ジーフォース、ゴールドリームなどのG1タイトルホルダーも馳せ参じて見応えのある興趣に富んだ一戦になりそうですね。

日本でいえば函館2歳Sの2歳馬ブランボヌールが古馬に混じってスプリンターズSに参戦するようなことですが、ファンとしては観てみたいレースでしょう。血統のあり方から育成・調教のやり方まで、カルチャーショック的な変化を遂げねばならないでしょうが、今年藤沢和雄調教師が2歳馬のロイヤルアスコット遠征を模索したように、競馬の真の国際化の追求と競馬の進化という観点からはJRAも一考すべき時期なのかもしれません。

×