きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

競走の競争性

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かつて、せん馬シリュスデゼーグルのコリーヌ・バランド=バブル調教師が強い馬と戦う機会が与えられないのは、その馬の価値向上にとって不幸な出来事だと語ったことがあります。当時のシリュスデゼーグルは生涯最高のデキを保っており、中距離レース最高峰の英チャンピオンSで南十字星の下から来た英雄ソーユーシンクを倒し、翌年には怪物フランケルを向こうに回して2馬身足らずの接戦を演じた近年屈指の強豪です。

『もし彼を世界最高の馬と仮定した場合、彼と対戦しなかった馬はその価値を高める機会を失うことになります』と述べ、凱旋門賞を筆頭とするフランスのトップレースからせん馬が排除されている理不尽をアピールしています。競走にはフェアな競争性が介在してこそサラブレッドとしての価値を高められるという至極真っ当な意見です。せん馬は確かに産駒をターフに送り込むことはできないが、その強さや速さはレースのクオリティを高め、競馬全体の価値向上に貢献できるのだ、と。

昨夜の英グッドウッド競馬場、マイル最高峰レースのG1サセックスSはフランスから遠征したソロウが人気通りに勝利の凱歌を上げました。これで破竹の7連勝、今季はG1を4連勝の無敵ぶりです。同一シーズンにG1を勝ち続けるのは至難の業です。今世紀に入って昨年のキングマンと08年のヘンリーザナヴィゲーターが達成しています。これが5連勝となるとロックオブザジブラルタルとフランケル、これも2頭だけです。ソロウがこのクラスの偉大な名馬の仲間入りをしたと考えて良いのでしょう。しかし哀しいかな、彼はせん馬の身です。母国フランスでは出られるレースが限られてきます。ジャパンCを勝ち日本の高速馬場に適性があったシングスピールの息子ですから、いっそマイルチャンピオンシップから香港マイルというローテーションはいかがでしょうか。日本馬には世界のソロウを打ち負かす機会が与えらるわけですし、ファンは大歓迎してくれますよ。

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