きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

馬名が紡ぐ競馬文化

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イギリス・エプソムで伝統のダービー、ニューヨークで三冠最終関門ベルモントS、東京は最強マイラーの頂点を競う安田記念と気ぜわしい週末でしたが、世界のビッグレースをご堪能なさったと思います。アメリカでは遂に37年来の呪縛が解け、待望の三冠馬が誕生しました。競馬盛り上げの狼煙を上げたのはアメリカンファラオです。走るたびに強さばかりか凄みまでを増す強烈なインパクトでした。追いかける馬が潰れるほど速くて強い、アメリカ競馬の醍醐味を凝縮したようなサラブレッドですね。馬名はエジプト王の尊称から、サッカーエジプト代表の愛称になっているほど親しまれ、誇り高い言葉です。祖父エンパイアメーカーが王づくりを志し、父パイオニアオブザナイルが未開の荒地を開拓、治水にも成功して王国の土台を築き、孫がファラオという名の三冠王に君臨する、そんな三代の勇壮な歴史大河ドラマが読み取れそうです。

この間の日曜東京の未勝利戦をラセレシオンという牝馬が勝ち上がりました。馬名はサッカーアルゼンチン代表の愛称を由来にしているようです。サッカー繋がりかと調べると母アルゼンチンスター、やはりペルーサの全妹という血統でした。ペルーサはご承知のように人気も高くファンが多い馬です。来週開幕するロイヤルアスコットに遠征中の天皇賞馬スピルバーグの山本英俊オーナーの愛馬でアルゼンチンの国民的英雄(スター)マラドーナの愛称を馬名に貰っています。ラセレシオンはクラブ法人の老舗・社台レースホースの所有馬で、まったくのオーナー違いです。どういう経緯だったのか、まったくの偶然だったのか、いずれにしろファンにとってみれば同じ母馬の兄妹が同じテーマの下に名付けられているのは嬉しいものです。競走馬がオーナーのみならずファン皆のものだと思え、親しみが増し愛着もひとしおの趣きです。そこにどこかしら知性の風が吹いてきます。競馬がギャンブルだけでなく、スポーツという枠すら超えて、一つの文化になってゆくような気がします。

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