きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

オッズを創る男

ようそこいらっしゃいませ。

日曜日に迫ったエプソムダービー、混戦模様だけに既に牡牝のギニー戦線をともに制している腕っこきライアン・ムーア騎手がどのえ馬に乗るのかが焦点の一つでした。主戦を務めるクールモア勢は3頭が出走しますが、モンジュー産駒ハンスホルバイン、ハイシャパラルのキリマンジャロ、力は紙一重と見られていたのですが、結局ムーアが選択したのはガリレオ産駒ジョヴァンニカナレットでした。一昨年、ムーアとコンビを組んでエプソムダービーを勝ったルーラーオブザワールドの全弟です。
有力馬にスタミナ不安も囁かれ、サドラーズウェルズ系ガリレオと母父キングマンボをひっくり返したエルコンドルパサー相似配合は頼もしい限りでしょう。

この鞍上決定でブックメーカー各社は一斉にジョヴァンニカナレットの評価を見直し、10倍以上あったのが7倍程度と急騰しています。倍に跳ね上がったなんてケースも見受けられます。ライアン・ムーアという男はオッズまで創ってしまうんですね。

ジョヴァンニカナレットはヴェネツィア(ヴェニス)に実在した18世紀の風景画家・版画家です。パノラマ風の斬新なタッチで水の都ヴェネツィアの美しい光景を今に遺しています。ヴェネツィアは世界の海を制圧した海洋国家としても有名で大規模な造船工廠を構えていました。その技術顧問の名をガリレオ・ガリレイと言います。彼はヴェネツィアに通ううち、マリナ・ガンバと愛を育み、ヴィルジニア、リヴィアと名付けられた女の子2人に父になります。日本に輸入されたガリレオ牝駒にはこの名前を馬名に戴いた仔が走っています。孤高の天才科学者ガリレオにはジョヴァンニが描いたようなヴェネツィアの美しい風景が癒しとなっていたのでしょうか。並ぶもののいない天才種牡馬ガリレオにジョヴァンニカナレットがエプソムダービー制覇の吉報を届けることができるのでしょうか。

もし勝てば、ガリレオ産駒によるダービー3連勝、通算では自身を含めると5勝目になります。全兄弟による制覇というオマケまで付き記録、記録の大盤振る舞いとなります。ガリレオは人類史を大きく転換させましたが、ガリレオは競馬の歴史を塗り替えてしまうのでしょうか。

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