きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

血統の探求者たち

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英愛仏三国のクラシック第1弾ギニー戦線、各国の牡馬チャンピオンを決める2000ギニーは、アイルランドのクールモア=オブライエン厩舎のガリレオ産駒グレンイーグルスが英愛ダブル制覇で圧倒しました。鞍上は今季から軍団の主戦を務めているライアン・ムーア騎手でした。日本でもお馴染みでご存じのようにムーア騎手は、いま世界でもっとも乗れているジョッキーです。向こうの騎手は技術といい、ここ一番の勝負勘といい、敬服させられる人がたくさんいるのですが、ムーア騎手とフランスのスミヨン騎手はちょっと抜きん出た存在のように思えます。ロイヤルアスコットのG1プリンスオブウェールズSでは日本のスピルバーグにスミヨンが乗るそうですが、たぶん有力馬グレイザギャッツビーで迎え撃つムーアとの対決も楽しみのひとつです。

それはさておき牝馬の1000ギニー戦線は、そのムーア騎乗のレガティッシモというデインヒルダンサー産駒が1分34秒60という史上2番目の快時計で他を寄せ付けない圧巻のパフォーマンスを披露しました。母父がスタミナと底力に富んだモンジューで、母の全弟に愛ダービーや4000mのアスコット金杯など長距離で強かったフェイムアンドグローリーがおり、オークスもドンと来いですから牝馬二冠も夢ではないでしょう。ライバルのスミヨン騎手はアガ・カーン殿下のエルヴェディアで仏1000ギニーを勝ちました。さすがですが、こちらはヌレイエフですがスプリンター色の濃いシヨーニの血でオークスとなると少し距離が長いかもしれません。

アイルランドでは血統の探求者ジム・ボルジャーが手塩にかけたプリースキャッチがクールモアの女王ファウンドを抑えました。ボルジャー師は生産に携わり、馬主は夫人名義、調教はおろか自ら厩務員まで務める100%純正ボルジャーブランドの名馬を輩出しています。ニューアプローチ、ドーンアプローチ親子、この馬の父テオフィロなどはその魁的存在ですね。テオフィロでガリレオと母父デインヒルのニックスを開発したのはこの人だと言われています。オブライエン師の師匠格でもあり、クールモアは師に足を向けて寝られません。母父がミスプロ直系のサンダーガルチですが、配合によっては長い距離をこなすこともあり、ボルジャー・マジックに注目したいと思います。来週からは三冠馬に挑むアメリカンヒーロー=アメリカンファラオのベルモントS、そしてヨーロッパオークス&ダービーの話題に取り組んでいきます。暇な折に当欄を覗いていただければ幸いです。

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