海外だより

少頭数G1の醍醐味

今週はアスコット競馬場2400mで伝統のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSが開催されます。5年前、レーシングカレンダーに壊滅的な打撃を与えたコロナ禍から、ようやく立ち直って来た競馬界ですが、今年は残念ながら5頭立てと寂しい顔ぶれになりました。日本でサラブレッドの故郷とされる北海道で連日のように〝40度越え予報〟がマスコミを賑わすなど地球温暖化の影響が及び始めているのでしょうか。この少頭数化現象の背景で進んでいるのが、一つには出走馬主の特定化が目立ちます。コロナ禍直下の20年の3頭立ては、クールモアが2頭とジャドモントファームの構成でした。翌21年の5頭立てもクールモア2頭、ゴドルフィンとサウジアラビアのファイサル王子らで出馬表を占めました。

今年の5頭は、2頭出しのクールモアを筆頭に、ゴドルフィン、ジャドモント、アガ・カーン殿下のご遺族が1頭ずつとなっています。こうした出走馬主の固定化は、それら大馬主さん保有頭数の圧倒的多さというよりは、競馬に対する情熱と歴史や伝統に対する責任感がそうさせているのだと思います。こういう熱い気持ちなしには、競馬の成長や発展的持続もなかったと考えられます。一ファンとしては感謝しかありません。

さて、5頭立てとなったキングジョージ6世&クイーンエリザベスSですが、ペースメーカーの役割を担ってゲートインするクールモアのハーツクライ産駒コンティニュアスは別として、他4頭に実績や実力の差は感じられず、拮抗した白熱の勝負を期待できそうです。エメラルドグリーンのアガ・カーン殿下直伝の勝負服が良く似合うカランダガンは、ワールドクラスのトップG1を4戦連続2着の無念を前走サンクルー大賞で晴らし、全身あるのみと勢いに乗っています。秋の凱旋門賞の晴れ舞台で亡き殿下に良い報告をするためにも、ここからは真一文字に前進あるのみでしょうね。クールモアのヤンブリューゲルは、故障で緊急引退した長距離界の絶対王者キプリオスの後継者と目されていましたが、ステイヤー離れした秘めたるスピードを買われてチャンピオンロードに打って出ました。伸び代を含めて互角の評価です。ゴドルフィンのレベルズロマンスはここまでG1を7勝して、既に歴史的名馬の域に脚を踏み入れています。実績の割に地味な印象もありますが、大一番での勝負強さを刮目したいと思います。めいもんジャドモントが送り込むカルパナはディープインパクトの孫娘、ここでは紅一点の軽量を活かせばチャンスが巡って来そうです。フランケルやキングマンを世に出した名門牧場の底力を天下に喧伝してくらるでしょうか。楽しみです。

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