海外だより

東アジアの時代

今週の海外競馬は、年に何度もない超豪華版です。注目の的は、日本でも主要4レースの馬券発売が実施されるドバイワールドカップデーでしょうか。7カ月間にも及ぶ『ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダ―ビー』の出走権争奪シリーズも、いよいよ大詰め。今週末から来週初めにかけて、サンタアニタ、キーンランド、アケダクト、そしてワールドカップデー当日のUAEダービーの4レースが行われます。中でも熱いのは、本番前売りの1番人気ジャーナリズムと2番人気シチズンブルの両雄が激突するG1サンタアニタダービーですね。そのレース内容次第では、もう1頭の2番人気タイにピックアップされている日本馬ルクソールカフェが急浮上する可能性もあります。中山の急坂を稲妻が切り裂くように駆け上った伏竜Sは、異次元級の能力を感じさせました。アメリカが生んだ英雄アメリカンファラオの血が日本で育て熟成させ、今またアメリカで開花しようとしています。昨年のフォーエバーヤングのハナ+ハナ惜敗の無念を見事に晴らしてくれるでしょうか。UAEダービーも勝てば文句なしにダービー切符をゲットできます(2着でも可能性は十分です)が、ヤングと同じ勝負服のシンフォーエバーは金星へ虎視眈々でしょうね。

そのフォーエバーヤングが主役を務めるドバイワールドカップデー。明日土曜にメイダン競馬場で行われるサラブレッドの重賞レースはG1が5、G2が3の計8レースに93頭が出走を予定していますが、そのうち実に23頭が日本調教馬です。日本調教馬が誇れるのは出走頭数の多さだけではなく、メインのドバイワールドカップで圧倒的な前評判を世界中から寄せられているフォーエバーヤングを総大将に、各レースに有力馬を送り込んでいます。唯一、日の丸出走馬のいないG2ドバイゴールドカップも、本命候補のコンティニュアスはアイルランドで調教されていますが、日本生まれのハーツクライ産駒です。この〝日本馬ラッシュ〟を目の当たりにして、故エリザベス女王も愛読していた伝統と品格を誇る競馬メディア『レーシングポスト』は、「(日本が飛び抜けた)競馬と馬産の実力を浮き彫りにしている」と溜め息混じりに述懐しています。

サウジカップを勝ったフォーエバーヤングに全身から冷や汗を噴出させるような思いを味わせたロマンティックウォリアーも香港で調教された馬です。さらにお隣の韓国は、日本や香港の成功例に学んで、ファンを取り込む巧みなマーケティング戦略で成長ぶりを注目されています。まだパート2国であり、ダート競馬オンリーですが、ドバイワールドカップの前哨戦・G2アルマクトゥームクラシックで韓国唯一の女性騎手キム・ヘソンさんを背に思い切り良く逃げまくって、最後の最後まで懸命に粘り抜き3着に踏ん張ったグローバルヒットの勇敢な戦いぶりには、心を打たれました。一昔前の日本馬の一生懸命さが伝わってくるようです。今回は激戦の疲労を癒すために本番を前に帰国しましたが、いずれは日韓交流レースなどで互角の戦いを演じる日も遠くないと思わされました。

ドバイ・アメリカに加えて、今週はオーストラリア・シドニーへも日本調教馬が遠征します。同地の春競馬のクライマックスを飾る『ザ・チャンピオンズシップス』が行われるからです。今週はスプリントのG1TJスミスSとマイルG1のドンカスターマイルが行われ、後者にはジオグリフが出走します。来週はメインのG1クイーンエリザベスSと超長距離のシドニーCで、後者はローシャムパークが出走し馬券発売も予定されています。中東・北米・オセアニアといくつもの大陸と大洋を股にかけて競馬が同時進行で開催されていますが、どうやら世界の競馬界はアジア、とりわけ東アジアへと風が吹きよせているようです。中でも生産・育成・調教から競馬の実施・運営まで様々な領域でリーダーシップを発揮しているという面では、日本に一日の長がありそうです。レースで勝つというのは、そうした営為の積み重ねだということでしょう。そうした意味、そうした思いを込めて『ガンバレ!日本』と思います。

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