海外だより

復活劇に沸く欧州競馬

日本時間で昨夜のイギリス・サンダウン競馬場では、ヨーロッパ古馬戦線で復活が待望されていた昨年のヒーロー2騎の直接対決で大いにファンを湧かせました。G3ながら非常に人気の高いサンダウン名物のブリガディアジェラードSがそのレースです。ブリガディアジェラードは70年代にデビューから15連勝を記録して、名馬リボーなどが持つ16連勝のヨーロッパ記録をかけた一戦でロベルトに敗れています。大変に人気の高かった馬で、逆にロベルトはファンのブーイングを浴びる稀代のヒール(悪役)として歴史に名を残すことになります。しかしブリガディアジェラードの血統は牝系を通じて残る程度にすたれ、ロベルトは日本でもブライアンズタイムなどを通じて大きく広がり、最近ではシンボリクリスエス経由でエピファネイアがロベルト系の裾野を広げています。

とは言え、ブリガディアジェラードの国民的人気の高さは、引退して半世紀たった今でも変わらず、その時々の名だたる実力馬たちがシーズン初戦をここで迎えます。今年は実力も話題性もトップクラスの2頭が揃い踏みして、例年以上の盛り上がりを見せました。昨年ケタ違いのポテンシャルを爆発させてG1戦線で圧勝の連続だった怪物バーイードの全兄フクム、さらに3戦3勝でダービーを制覇したデザートクラウンの黄金対決はファンの興味を大いに煽り立て、最高に盛り上がりました。考えてみれば、フクムは1年前の6月の第1金曜日にG1コロネーションSで素質開花させ、その翌日の土曜日にデザートクラウンがダービー馬の王冠を戴冠していますから、2頭とも約1年ぶりの実践ということになります。レースはファンの思いを乗せて、先に抜け出したデザートクラウンをフクムが追い込む一騎打ちの形勢になりました。逃げ込むデザートと急襲するフクムが一歩も譲らぬ叩き合いを繰り広げますが、追うものの強みでフクムが一歩出たところがゴールでした。実力馬がかつての強い面影そのままに、華麗な復活を遂げてくれるのは嬉しいものです。

来週はダービー&オークスウィークを迎えるエプソム競馬場を舞台に、古豪たちの大いなる復活劇が幕を切って落とします。その大一番・コロネーションCは、復活したゴドルフィンの2強、ダービー馬アダイヤーと愛ダービー馬ハリケーンレーンはともにフランケル産駒で一昨年の2頭でビッグG1を5勝するハードローテーションから昨年はちょっと一服しましたが、今季は前走をともに勝ち上がって不死鳥のように奇跡の復活を遂げるか?楽しみでなりません。昨年の英オークス2着エミリーアップジョン、英ダービー3着ウェストオーヴァーはともに不利に泣いた印象でした。まともならポテンシャルの高さはここでも上位とブックメーカー各社は評価しているようです。また
ルクセンブルクとポイントロンズデールのエイダン・オブライエン勢は今週日曜のG1タタソールズゴールドCと両睨みで、振り分けて使い分けされるのでしょうが、どちらか言えば個人的には長い休養明けを今季2連勝しているポイントロンズデールの成長力に注目したいですね。日本人馬主でファンにもお馴染みの全兄ブルームと同様にタフネスさを受け継いでいれば、さらなる上積みを期待しても良さそうです。
これだけ超豪華な顔ぶれを勝ち抜くなら、本番でも主役を張るのは間違いないでしょう。普段なら超一流馬は3歳いっぱいで牧場に帰ることが多いヨーロッパですが、コロナ禍で必ずしも順調に使えなかった影響もあるのか?休養を挟んで鍛え直して復活の道を志す馬が目立ちます。それはそれでファンにはありがたく、喜びでもあります。コロナ禍転じて豊穣のシーズンとなりそうなのは楽しみです。

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