海外だより

トライアルたけなわ

ヨーロッパでは、先週末に2000ギニー&1000ギニーでシーズン開幕したと思ったら、もう今週はオークス&ダービーへ向けたトライアルレースがタケナワです。この前哨戦ラッシュも、来週半ばのG3ムシドラSでオークスの、G2ダンテSはダービーの王道トライアルでひと段落を迎え、いよいよ桧舞台を待つばかりとなります。前者は一昨年のオークスを歴史的大差でぶっちぎったディープインパクト産駒のスノーフォールが初めて広く名を知られるキッカケとなり、後者は数多のダービー馬を輩出している王道中の王道レースです。今年も見逃せない一番になりそうです。

ここまでのトライアル戦線では、一昨日のチェスター競馬場で行われたG3チェスターヴァーズ、リステッドながら名馬エネイブルを世に送り出して高い格を認められているチェシャーオークスが印象的でした。前者は約2500m、後者は約2300mと全馬が経験のない未踏の領域に挑戦するトライアルらしい趣向で、ちょっとした適性差などが大きな着差を生み出すことが珍しくありません。チェシャーオークスのセーブザラストダンスは名門エイダン・オブライエン厩舎の秘密兵器と評判になっていましたが、噂通り、いや噂を遥かに凌ぐパーフォーマンスを披露しました。直線で鞍上のライアン・ムーアに追い出されるとアッという間に後続を置き去りにして、付けた着差がナント22馬身差!チェスターは現存するイギリス最古の歴史を誇る競馬場ですが、1周1マイル≒1609m、直線1ハロン強の239ヤード≒218mと小じんまりした造りです。その極端に短い直線だけで22馬身差は想像を遥かに超えています。果たしてスノーフォールに勝るとも劣らない怪物に成長するのでしょうか?オークスのブックメーカーオッズは、秘密兵器を通り越して不動の大本命に祭り上げられました。父ガリレオ、母の父スキャットダディとクールモアが、近年においてディープインパクトとともに、もっとも執心してきた理想の配合馬です。悲運にも若死したスノーフォールの分まで暴れまくって欲しいものです。

ダービーを目指すチェスターヴァーズは、セーブザラストダンスほど派手さはなかったのですが、鞍上のランフランコ・デットーリが完全に手綱を抑えて、調教より遅いような楽走で直線を駆けたアーレストのパフォーマンスには驚かされました。それでも6馬身半差でしたから、ライアン・ムーアのように真面目に追っていれば、同じくらいの差がついたはずです。今年限りで引退と伝えれているデットーリ騎手のラストダービーのパートナーは、どうやらこのジュドモントファームのフランケル産駒で決まりでしょうか?ジョッキー界隈では、先の日曜の1000ギニーで、1年余りの騎乗停止明け久方ぶりのG1勝利を飾ったオイシン・マーフィーからも目が離せません。1000ギニーではゴドルフィンの重鎮・サイード・ビン・スルール調教師のモージョの鞍上で、大本命タヒーラと叩き合い半馬身競り勝った内容は本物の強さだったと思います。スルール師と言えば、デットーリとのコンビで“神の馬”ラムタラなど数々の歴史に残る名馬を生み出して来た名伯楽です。名手マーフィーとのパートナーシップは、オークスを含めて今後のスポット騎乗が構想されているようで、ヨーロッパ競馬の台風の目となるかもしれません。

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