海外だより

スーパーサタデー

パンサラッサの“1000万ドルの大逃走”が、テレビ越しに手に汗を握ってそれを凝視する世界の競馬ファンの度肝を抜いてくれました。しかしスタートが切られると、ファンはもちろんライバルたちの想像を超えるパンサラッサ一流のド派手な大逃げではなく、吉田豊騎手とパンサラッサは真っ正直にも正攻法の逃げを打ちました。追いかける方から見れば、想像を裏切られ「アレっ?」と拍子抜けさせられる思いだったかもしれません。それにしても素晴らしい競馬を見せてもらいました。パンサラッサ以外の日本馬も期待に違わぬ頑張りを見せてくれたと思います。馬たちや関係者の皆さまに感謝です。

さて、今週はドバイ・メイダン競馬場を舞台に、賞金総額全体ではサウジカップデーを抑えて世界一を誇るドバイワールドカップデーへの最終関門「スーパーサタデー」が開催されます。G1が2レース、G3は3レース、G2とリステッドが各1レースのプログラムと華やかな顔ぶれが並びました。目玉はワールドカップ前哨戦のG1アルマクトゥームチャレンジ・ラウンド3は手薄なメンバーになりましたが、ドバイターフへの王道であるG1ジェベルハッタには面白い馬が集まっています。本番に出走予定の日本調教馬はレース直後のサウジ組も多く、全馬が直行ローテーションになります。マイルチャンピオンシップ馬セリフォス、昨日の追い切りでラスト10秒6と稲妻の切れ味を披露したダービー馬ドウデュース、そして“真打ち”を張る賞金王パンサラッサなど目の眩むような豪華絢爛なヒーローたちがスタンバイしています。

それだけに今回のジェベルハッタは、いわば挑戦者決定戦といった趣が充満しているのですが、とは言えゴドルフィンの有力馬3騎が「我こそは!」と打倒日本勢の名乗りを上げて来ました。ブックメーカーの人気順にドバウィ産駒のマスターオブザシーズが1番手でしょうか?今季はG3、G2と重賞を連勝中で、昨年の2000ギニーで短頭差2着しているようにポテンシャル上位の底力が不気味です。2番手のリアルワールドはダークエンジェル系のスピード馬で、昨年は怪物バーイードを向こうに回してG1で連続2着しています。実績は凄いですね。3番手といってもヴァリアントプリンスは、本番ドバイターフ、このジェベルハッタと同コース同距離の重賞を2連勝中と波に乗っています。さらに香港からの刺客ロシアンエンペラーも、カタールG1でエイダン・オブライエン厩舎のヨーロッパ強豪連をなぎ倒して来ました。少し距離が足りない気もしますが、破竹の勢いに注目します。カタール、サウジアラビア、そしてドバイと中東諸国のホースマンが頑張りを見せれば、ヨーロッパ、アメリカ、さらには日本や香港のアジア勢も積極的に参戦して、“ポスト・コロナ禍”の世界競馬はびっくりさせられるほど盛り上がっています。この勢いを、是非とも長く持続させたいものです。

×