海外だより

ドーハの熱風

年の変わり目から春のドバイ開催までのこの時期は、長い間シーズンオフという感覚が強かったのですが、最近はレーシングカレンダーは隙間なくスケジュールで埋められるようになって、ファンもうれしい悲鳴を上げるほど忙しくなりました。先月末にアメリカでダートとターフ両方のG1ペガサスワールドCが行われたと思ったら、今月は世界最高賞金のサウジCなど中東サウジアラビアの一大カーニバル、来月にはドバイミーティングと息つく間もありません。今週はちょっと地味ですが、カタールのドーハで先だってのサッカー・ワールドカップのメイン会場となったカルファ国際競技場に隣接するアルライアン競馬場を舞台に、世界のレーシングカレンダーに定着しつつある恒例のシリーズが開催されます。

カタール競馬は発展途上で、国際的には「パート3国」の格付けですから、レース自体にまだ国際グレードは認められずローカルG1の位置付けになります。しかし角度を変えて見ると、カタールは世界的な競馬大国とも言えます。最近もサッカーの世界的強豪マンチェスターユナイテッドの買収話が飛び交っていますが、潤沢なオイルマネーを背景に、さまざまな分野でダイナミックな投資を行っています。競馬の世界でも凱旋門賞スポンサーを続けているのは有名ですが、アスコット競馬場のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSやブリティッシュ・チャンピオンSなどG1中のG1にも手厚いサポートを続けています。ヨーロッパでは、カタール抜きにビッグレースが成立しないほどです。日本でもファハド殿下を中心に活発な馬主活動を行っていますね。殿下はセレクトセールにも熱心に参加し、栗東の中内田充正厩舎などを中心に愛馬を走らせています。

さて今週末に行われる「アミールトロフィー」は、日本で言えば「天皇賞」のような位置付けで、もっとも格式の高いレースです。先述のようにローカルG1の立場ですが、総賞金250万ドル≒3億2500万円(@130円で換算)・1着賞金142.5万ドル≒1億8500万円と優に国際レベルを超える賞金を提供しており、ヨーロッパなどから毎年のように有力馬が参戦しています。日本でもお馴染みのオリビエ・ペリエ騎手が2連覇して気を吐いていますが、今年もフランスのカルロス・ラフォン-パリアス厩舎のリオコルヴォで参戦します。凱旋門賞時にディープインパクトを預かった親日派調教師ですね。その他にも今回は超豪華メンバーが揃い、香港のG1馬ロシアンエンペラーの姿もあれば、アイルランドの名門エイダン・オブライエン厩舎は2頭出しで勝利への意欲をみなぎらせています。その1頭であるブルームはご存知のように、先日の京都記念を圧勝したドウデュースの馬主でもあるキーファーズさんがクールモアと共同所有している馬ですね。今回もドウデュースと同じ勝負服でドーハの馬場を疾走します。主戦騎手ライアン・ムーアが乗るストーンエイジは、昨秋の北米頂上戦ブリーダーズCターフで2着した馬で今年のさらなる飛躍が期待されています。昨年は世界中のG1でロイヤルブルーの勝負服を躍動させたゴドルフィンは、上がり馬ウォーレンポイントで挑みます。鞍上はもちろんウィリアム・ビュイック、競馬シーズンがスタートしたばかりですが、いきなり熱い真剣勝負が見られそうでワクワクさせられます。

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