01. 秋はマイルチャンピオンシップが目指せるといいなと。条件はベストだし、戦える感触はあります。
ランスオブカオスとの出会い
細江吉村騎手はデビュー2年目にして、もう重賞を2勝しています。まず、最初の大きな出会いとなったのは、ランスオブカオスだと思いますが?
吉村はい、デビュー前から乗せてもらっていて、すごくいい馬だなと感じていました。
細江新馬戦のスタートは、ゆっくりしていましたけど、あまりゲートは得意じゃない子なんですか?
吉村いえ、ゲート練習では、そんなことはなかったんです。あの新馬戦では牝馬ばかりで(10頭中、8頭が牝馬)集中できていませんでした。鳴く場面もありましたし。
細江隣のゲートも女の子でしたもんね。
吉村そうなんです。駐立は問題なかったんですが、ソワソワしていました。そうこうするうちに、ゲートが切られてしまって。まあ、出遅れてしまったのは、しかたがないので、なんとかケアをしながら、何かひとつでも教えられればと。
細江考えを切り替えたんですね。結果は3馬身差の快勝。直線で素晴らしい切れを見せました。かなり能力はあると感じました?
吉村調教よりレースでの感触のほうが良かったですし力はあるなと思いました。
細江手応えを感じたんですね。次は朝日杯フューチュリティSでしたよね。キャリア1戦での重賞参戦でしたが?
吉村中1週と間隔がなかったので、馬のメンタル面がどうかと考えました。
細江確かにハードなスケジュールですもんね。吉村騎手自身も、初めてのG1騎乗でしょ?自分のメンタルのほうは?
吉村とくには…今振り返っても自分のテンションが変わったということはなかったですね。
細江すごい冷静。では、ご自身は平常心でレースに臨めたんですね。馬の方はどうでした?
吉村どっしり構えている馬なので、変わった様子はありませんでした。
細江レースですが、この時はノンビリだったとはいえ、キレイにスタートが切れました。女の子はいなかったし、集中できたんですかね?
吉村はい。ゲートも出て折り合いもスムーズでした。
あの枠では腹をくくるしかなかった
細江道中では初めての包まれる形でも我慢し、直線で一気に脚を伸ばしての3着でした。
吉村本当に、良く走ってくれました。新馬戦を勝った時点で、他の馬とは違うと感じていましたから、G1でもある程度はやれるなとの感触はあったんです。改めて、競馬が上手だなと思いました。
細江手応えを感じて、年明けは、きさらぎ賞に向かいました。
吉村ここまでの2戦は1600m戦でしたし、マイラーだろうなという感覚はありました。だから、初の1800m戦に対応できるかですよね。
細江その感覚は陣営に伝えてみました?
吉村はい。距離が延びたら、今以上のパフォーマンスは望めないと思ったので。でも、ここでいい競馬ができれば、皐月賞に行けますし…。
細江陣営やオーナーの気持ちを考えると、悩ましいところですよね。レースでは直線で勝ち馬に次ぐ末脚を繰り出しましたが3着でした。マイラーだと感じていたなら、続くチャーチルダウンズCは今度こそという思いが?
吉村そうですね。きさらぎ賞も自信はあったんですが、どうしても距離がこなせなかった。でも、今回は1600mです。勝ちたいと思いました。
細江あのレース、すごいな~と思いました。前半は先団で我慢させて、直線で一瞬の隙を突いて脚を伸ばしましたよね。馬もジョッキーも、慌てることなく走り切りました。
吉村あまり怖じ気づいたりしない馬なので、あのレースができました。レース前、人気(2番人気)になっていたので、マークされるだろうなと予想していました。厳しいレースになるなと。だから、ある程度は我慢させて、進路ができるまで待つしかないと。
細江「進路がない」ってことになるかもしれなかったですよね。その場合は?若手だし、いろいろ言われちゃうかも。
吉村そこは、腹をくくるしか。あの枠(6枠7番)では、あの競馬しかないと思ったので。
細江じゃあ、突き抜けた時は気持ちよかったですね。
吉村うまくいきましたよね。馬も思った通りの走りをしてくれました。
想像以上に速かったペース
細江こうなると、次に参戦することになったNHKマイルCでの走りへの期待が高まります。でも、東京の芝1600mは馬も吉村騎手も初めてでした。
吉村競馬学校の模擬レース以来だったので、VTRを見たりして東京芝マイルのイメージを作っていきました。当日、NHKマイルCの前に、同じ芝1600m戦の未勝利戦に乗れたのは良かったです。馬も関東初参戦だったので、長距離輸送をクリアしてくれればと思っていました。
細江事前にコースを経験できたとはいえ、東京マイルはペース次第の難しさがありますよね。馬の実力も出やすいし。しかも、あの日はコースの内めは厳しかったのに、3枠5番からの発走でした。
吉村人気馬も内めの枠だったので、外に持ち出すのは難しいだろうなと思いました。選択肢は少なかったですね。
細江あの好スタートはビックリでした。行きっぷりも良かったですし。
吉村前走のスタートから、ここで出遅れることはないと思っていました。出たらまず折り合いに専念したかったんです。前に壁を作って脚を溜めようと思いました。
細江じゃあ、あれは想定内だったんですね。
吉村そうですね。あとは、他の馬の出方次第だと。スタートを出てくれたので、その後を考える余裕ができました。
細江それで、道中は馬と喧嘩せず、スピードが落ちないように気を配ったんですね。
吉村はい。でも、想像以上にペースが速くなった。それが、唯一の誤算です。有力馬に近いところにいたかったんですけど、取り囲まれて下がるに下がれない状況になりました。外に持ち出したいとは思いましたが、あれ以上はちょっと…。
細江結果は5着でしたが、直線は横並びの接戦で、勝ち馬とは0秒3差でした。難しい競馬でしたけど、自分が描いたことはできたと思いますか?
吉村そうですね。ホント、ペースが思ったより速くなったのが…。乗っている時はハミもしっかり執っていたし、ちょっと速いかなぐらいで、自分の馬が1分32秒0もマークするなんて感じではなかったんです。
高まる秋への期待
細江このレースができたとなると、秋も楽しみです。やはり、マイル戦でと考えていますか?
吉村適距離は絞れましたからね。秋はマイルチャンピオンシップが目指せるといいなと。条件はベストだし、戦える感触はあります。
細江大舞台に一緒に行ける馬がいるのはいいですね。さらに、気になるレースがあるんですよね。ガイアフォースとの安田記念参戦も注目を集めました。テン乗りでしたが?
吉村はい。でも、追い切りに乗せてもらいました。動きは悪くなかったんですが、香港Cに参戦して帰国後すぐでしたよね。ややフットワークにまとまりがない感じがしたというか。海外遠征のダメージがあったのかもしれませんね。
細江安田記念も東京のマイル戦でした。この馬はダートですが、東京の1600mはフェブラリーS(2着)で経験しています。どんなイメージを?
吉村そうですよね。過去のレースを見て、この馬にとって今回は走りやすい条件ではと思いました。初ブリンカーの予定でしたし。前半で急かすと、しまいがダラダラしそうだったので、前半は我慢させて最後に脚を伸ばすイメージで臨みました。
細江結果、直線いい脚で伸びて1馬身半差の2着でした。
吉村3コーナー手前でゴチャついた時、ポジションを下げてしまったのはミスだったなと思います。
細江そこがうまくいけば、勝つかはともかく、勝ち馬との差は詰まったかもしれない?
吉村そう思います。
細江でも、間違いなく吉村騎手の評価を上げる一戦となりましたよね。
(構成:スポーツ報知 志賀浩子)

細江 純子
1975年愛知県蒲郡出身。1996年JRA初の女性騎手としてデビュー。2,000年日本人女性騎手として初の海外勝利(シンガポール)。2001年引退。引退後はホースコラボレーターとしてフジテレビ『みんなのKEIBA』関西テレビ『競馬BEAT』に出演。夕刊フジ・アサヒ芸能などにコラムを連載中。書籍は『ホソジュンのステッキなお話』文芸ポストでの短編小説『ストレイチャイルド』。