ゲスト
クロワデュノール号担当 間宮 辰徳さん 栗東・斉藤崇史厩舎

02. 自分の感情を馬にぶつけたりせず、馬房が馬にとって、一番リラックスできる場所にしたい

自分の感情を馬にぶつけたりせず、馬房が馬にとって、一番リラックスできる場所にしたい
細江純子さんをインタビュアーに迎えてお届けする『イケメンホースたち〜担当者が思う愛馬の素顔〜』。クロワデュノール号担当の間宮辰徳さんをゲストに迎えた後編は、競馬へ関わるようになった経緯や馬と向き合うときに大事なことなどをお聞きしました。

競走の仕事に関わるようになった経緯

細江間宮さんが、この世界に入った経緯は?

間宮もともと動物が好きで、動物園の飼育員もいいなんて思っていました。中学生になって、乗馬クラブを見学したことがあったんですが、その時は馬の仕事につきたいな~なんて。親が競馬を見ていた影響で、ダビスタとかもやっていましたし。

細江いま、43歳。たしかに、ダビスタ世代ですね。

間宮そうですね。で、高校を卒業するとき、同級生はみんな進学だったんですが、僕は馬の仕事をということで、乗馬クラブで働くことにしたんです。体育会系で厳しかったですね。その後、愛知にあるイクタトレーニングファームに移りました。

細江そこで、競走馬の仕事をはじめたんですね。その後は競馬学校に入学して、トレセンに入ったのは何年ですか?

間宮2005年ですね。最初は五十嵐忠男厩舎の所属でした。

細江この道、20年のベテランですね。馬に接するうえで大切にしていることって何ですか?

間宮自分の感情を馬にぶつけたりしないということでしょうか。馬房が馬にとって、一番リラックスできる場所にしたいと思っています。

細江そうは言っても人間だからイライラすることや、プレッシャーから普段通りにできないこともありますよね…。

間宮イライラしたとしても、馬にはその感情はぶつけないです。それこそ、家に帰ってもイライラしないようにしています。家庭に仕事を持ち込みたくないですし。

細江でも、奥さんは、どのレースを使うか気になるんじゃ?

間宮あっ、競馬があることや、そのために出張になることは言いますが、どの馬で行くかは話したことがないですね。

細江えぇ~、そうなんですか?

間宮さすがに、クロワデュノールを担当していることには気づいていると思いますけど(笑)。

競馬の時はスーツで馬を曳く

細江そのほかに、大事にしていることは?

間宮競馬ではスーツで行くことですね。斉藤厩舎は競馬の時はスーツと決まっていますが、これまで所属してきた厩舎のなかには、そうでないところもありました。でも、僕は競馬の時は絶対スーツで馬を曳くことにしていました。

細江それは、どうして?

間宮オーナーさんの立場で考えたら、自分の馬が少しでも良く見えた方がうれしいだろうなと思ってです。曳いている担当者が、スーツなら見栄えがいいかなと。あと大事にしているのは、馬の変化に少しでも早く気がつくことです。

細江それは、重要ですよね。

間宮この世界に入って、初めて担当した馬が怪我で安楽死になってしまったんです。もともと屈腱炎だったんですよね。4コーナーで骨折してしまいました。その時は、もう辞めようとも思いましたね。馬が好きで、この仕事に就いたのに、何をしているんだろう、馬に申し訳ないって。だから、ちょっとの変化も見逃さないようにしようと心がけています。それは、自分の担当馬だけでなくですね。

細江厩舎のすべての馬の変化に気をつけているんですね。

間宮そうですね。たとえば、目の開きがおかしかったら、眼球に傷がついているかもしれない。それを見逃したら大変なことになります。そういう時は、その馬の担当者に伝えたり、先生に連絡したりします。後悔がないようにしたいんです。

細江しっかり、馬に向き合うことって大切ですよね。間宮さんは、これまでに、どんな馬を担当してきたんですか?

間宮石橋厩舎にいたときにスマートダンディーを、斉藤厩舎にきてからステラリアを担当しました。

細江担当馬がGⅠを勝ったのはクロワデュノールが初めて?

間宮そうですね。いまだに、どうしてあんなに走るんだろうって感じです。牧場時代に、ビリーヴに乗ったことがあるんです。あの馬がスゴかったですよ。すごく弾むし、ああいう感じはしないな~と。でも、友一は他の馬と併せた時の力強さはスゴイと言っています。だから、僕が乗る時程度の速度では、本気を出さないのかも(笑)。

いよいよ皐月賞本番

細江なるほど。さて、3月13日にノーザンファームしがらき(滋賀県)から栗東へ帰厩しました。

間宮レース間隔を考えて、今回は早めに帰ってきました。東京スポーツ杯2歳SとホープフルSまでの間隔と、皐月賞からダービーの間隔って、同じくいらいですよね。それを考えての帰厩です。520kgぐらいで帰ってきて、502kgほどになりました。大きい馬ですよね。でも、父のキタサンブラックに似て細身なんです。それに、首が長くてキリンみたい。できれば、プラス体重で出したいですね。

細江あっ、キタサンブラックが現役の時、私もキリンみたいって思ってました(笑)。メンタル面はどうでしょう?

間宮僕が乗っている時は。少しイライラしてるような感じはありますね。でも、15-15ぐらいでは前のめりですが、スピードが出ると体が起きて動いています。

細江間宮さんにも、前走以上のプレッシャーがかかりますが。

間宮しんどいですけど、しょうがないですよね。なかなかできない経験ですし。やれることやって、うまく仕上げていくしかないと思っています。

細江JRA最優秀2歳牡馬のクラシック初戦の走りを楽しみにしています。

(構成:スポーツ報知 志賀浩子)

細江 純子
1975年愛知県蒲郡出身。1996年JRA初の女性騎手としてデビュー。2000年日本人女性騎手として初の海外勝利(シンガポール)。2001年引退。引退後はホースコラボレーターとしてフジテレビ『みんなのKEIBA』関西テレビ『競馬BEAT』に出演。夕刊フジ・アサヒ芸能などにコラムを連載中。書籍は『ホソジュンのステッキなお話』文芸ポストでの短編小説『ストレイチャイルド』。

※この記事は 2025年4月11日 に公開されました。

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