ゲスト
ジュンブロッサム号担当 吉田 頼正さん 栗東・友道康夫厩舎

02. オーナーのためにも、調教で乗ってくれているスタッフのためにも

オーナーのためにも、調教で乗ってくれているスタッフのためにも
細江純子さんをインタビュアーに迎えてお届けする『イケメンホースたち〜担当者が思う愛馬の素顔〜』。今回はジュンブロッサムを担当する友道厩舎・吉田頼正さんに、友道厩舎の強みや競馬の世界に入ったきっかけなどをお聞きしました。

念願の重賞制覇

細江ブロちゃんですが、昨年の8月に関屋記念で3着から、続く富士Sでとうとう念願の重賞制覇を果たしました。

吉田まさに、ジュンブロッサムの走りでしたね。いいスタートを切って、後方に待機。雨が降り始めていたので、「やばい!」と思っていたんです。でも、戸崎騎手は直線で馬場の一番いいところを通ってくれました。その騎乗に感激しました。さすがです!

細江鋭い脚でソウルラッシュを差し切りましたもんね。素晴らしい競馬でした。

吉田うれしかったですね。レース後、馬場で馬を曳いていたら、オーナーがいらして握手をしてくれました。

細江担当の厩務員さんへの感謝と、勝利の喜びを...なんか、グッときます。

吉田僕もビックリしたし、胸が熱くなりました。ジュンブロッサムに出会えたのは、オーナーのおかげですもんね。そのときは、みんながいるので我慢していたんですが、上がり運動で馬と僕だけになったら泣けてきました。

細江これまでのことが、思い出されて?

吉田それはもう、走馬燈のように。勝ち切れなかった時期があったのは自分のせいだと思っていましたし、それなのに馬はあきらめないで勝ってくれました。「長いこと、苦労かけてゴメン」って。しかも、馬は曇りのない目をしていたんです。ただ、ひたすらに走ってきましたよって感じ。人間のような欲得がないんですよね。あまりに曇りがなくて、さらに涙が止まらなくなりました。

細江その様子を見て、ジュンブロッサムは?

吉田自分の仕事を終えたのが、分かっているんでしょうね。いたって普通でした。馬房に戻ったら、「夜食くださ~い」って前掻きしてました(笑)。

どうして厩務員に?

細江あっ、そこは平常心なんだ(笑)。ところで、吉田さんはどうして厩務員さんに?

吉田子供の頃は、よく父と京都競馬場に行きました。将来を考える時期になって、どうしようって。なんだか、フワフワしていたんです。

細江どんな職業に就こうか、イメージが定まらなかった?

吉田そうですね。そんな時、付き合っていた妻...あっ、この時は彼女なんですけど、その父親がハクタイセイ(90年皐月賞馬)の担当者だったんです。「これは、運命なんだ!」と厩務員の道に進みました。

細江子供のころの思い出もあって、進むべき道が決まったんですね。

吉田はい。そうだ! 競馬学校の厩務員過程にいたとき、実は騎手課程にした細江さんと一緒だったんですよ。

細江えぇ~、そうなんですか! なんだか、恥ずかしいですね。学校を卒業してからは?

吉田最初は島崎宏厩舎に、その後は服部利之厩舎に移りました。

友道厩舎の強み

細江吉田さんは友道厩舎の開業の時から所属しているんですよね。

吉田はい。服部厩舎にいたとき、「新しく開業する厩舎に一緒にこないか」と声をかけてもらったんです。それが、友道厩舎でした。いまでも覚えているのは、友道先生の開業の時の言葉です。「僕の仕事は、いい馬をつれてくることです」と言っていました。

細江まさに有言実効ですね。吉田さんも、これまでクラリティスカイ(15年NHKマイルC制覇)や、ハーパー(23年オークス2着)など担当なさってきました。友道厩舎の馬は古馬になってからも活躍しますよね。なかなか真似できない馬作りだと思います。

吉田ホント、友道先生はスゴイです。たま~に、「きょうは、しんどそうだな」って顔をしている時もありますが、忙しいなかでも先生はスタッフの話をよく聞いてくれます。みんなの話をうまくミックスして、出走スケジュールを組んでくれますし、その決断も早いんですよ。

細江会社で言うなら「いい上司に恵まれた」ってことですね。

吉田ありがたいですよね。スタッフはみんな先生を信頼しているし、厩舎一丸となって馬作りしています。

細江それが、友道厩舎の強みですよね。オーナー、先生、スタッフと向いている方向が一緒だから、みんなで目標に向かって調教過程を踏んでいける。それで、馬の能力が生かされているんですね。

吉田はい。それに、僕がG1を勝つ馬を担当することができたのも先生のおかげです。そんな先生の期待に応えたいと思っています。

オーナーのためにも、調教で乗ってくれているスタッフのためにも

細江先生とスタッフの絆の強さが、厩舎力につながっていると分かりました。ジュンブロッサムはマイルチャンピオンシップ(10着)後は放牧に出ているんですか?

吉田はい。

細江残念な結果でしたが、あの出遅れは響きましたね。直線で内からきていただけに...。

吉田スタートによっては、結果が違ったかもしれませんよね。あれで、馬場の悪い内を通ることになったわけですから。彼にとって最も条件に恵まれなかった一戦だったと思います。

細江もともと、スタートはいい馬だったのに、古馬になてからはゆっくりゲートを出るというか...。

吉田そうなんですよ。ゲートは練習では上手なんですよね。どうも、ゲートに僕が行くと、僕の方を見ちゃってるようで...。

細江じゃあ、富士Sやマイルチャンピオンシップのときは?

吉田あえて、どちらも行きませんでした。

細江う~ん、難しいですね。好スタートを切るほかに、ジュンブロッサムにとっての勝利の条件といと、どうなりますか?

吉田まずは、飼い葉をよく食べてくれていること。調教の段階からリラックスして走れていること。それに、天気が良くて馬場はパンパン。それなら、どんな枠を引いても、いい競馬をしてくれると思います。

細江今後はマイル路線での活躍が期待されますが、春は安田記念あたりが目標でしょうか?

吉田そうなりそうですが、そこは先生にお任せです。先生の考えたスケジュールに合わせて調整するだけです。きっと、安田記念にはソウルラッシュも出てくるでしょうから、それに負けない馬作りをしないと。

細江いい形で安田記念を迎えられて、そして今度はオーナーとG1制覇を喜べるといいですね。

吉田はい。オーナーのためにも、調教で乗ってくれているスタッフのためにも。期待に応えたいと思います。

(構成:スポーツ報知 志賀浩子)

細江 純子
1975年愛知県蒲郡出身。1996年JRA初の女性騎手としてデビュー。2000年日本人女性騎手として初の海外勝利(シンガポール)。2001年引退。引退後はホースコラボレーターとしてフジテレビ『みんなのKEIBA』関西テレビ『競馬BEAT』に出演。夕刊フジ・アサヒ芸能などにコラムを連載中。書籍は『ホソジュンのステッキなお話』文芸ポストでの短編小説『ストレイチャイルド』。

※この記事は 2025年1月17日 に公開されました。

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