ゲスト
和田竜二 調教師

02. 尊敬する師匠を目標に、旺盛な好奇心と譲れない信念で

尊敬する師匠を目標に、旺盛な好奇心と譲れない信念で
今年2月に騎手生活を引退し、調教師になられた和田竜二調教師をお迎えしてお届けする梅田陽子の「ホースと共に!」。後編では、調教師の立場から競馬への取り組み方、競走馬の見方、今後の目標などお話を伺いました。

“馬作り”の何が楽しいかというところを大事にして仕事をしてほしいです

梅田実際に乗り役としてやってきた経験を大切にしながら、今度は調教師という立場になることで、競馬の見方は変わってきますか?それとも、あまり変わりませんか?

和田う~ん、やっぱり経験したことを引き出せたら、それは強みだと思いますね。実際、レースに乗っていない方で、レースで走らせる、ゲートをどうしたらいいかというのは、分からないと言いますので。そのへんは競馬に直結しているトレセンが最前線なので、牧場の方とかにも「こうした方が経験上、いいと思います」というのは言えると思います。それがどういう結果になるかは、いざやっていって手探りなところではありますけど、やっぱりジョッキー時代には言えなかったこともあるにはあるので、それは自分が調教師になってから試してみたいな、というのはたくさんありました。

梅田ジョッキー時代と調教師としての目線は変わってくると思います。さらに引き出しが増えていくという感じでしょうか。

和田仕事の難しさはどんどん出てくると思います。僕の経験からこうやった方がいいということを、そのまま実際に競馬でやることは難しいと思うので、そこを理解してくれる人だったら、どんどんつながっていくと思います。牧場の方々にしてもそうですけど、生まれてから競馬に行くまで、ものすごく時間や手をかけてきて、血統も「この馬はこうだから」というのはあると思います。その全てをかみ合わせて万全の形で競馬を使うというのがこっちの仕事になってきますので、そのあとは騎手には任せられたらいいし、任せられない馬だったら、ある程度は情報をちゃんと伝えないといけない。それでみんながベストを尽くしたうえで、どういう結果が出るのかという楽しみはありますね。

梅田お弟子さんも受け入れて、育てていきたいというような考えもございますか?

和田僕も来年49歳になる年に開業なので、本当に定年まで20年ちょっとしかないので、早く根を張って安定したらですね。ただ、うちの弟子じゃなかったら面倒を見ないとかではなく、もちろん今の騎手候補生にもアドバイスはちゃんとしています。聞きに来てくれるのなら、もちろん僕のできることはしますよ。やっぱり僕も岩元先生の“岩元イズム”を受け継いで、厩務員さんなどスタッフの方々にもそうですけど、“馬作り”の何が楽しいかというところを大事にして仕事をしてほしいです。大変な仕事ですけど、みんなでやりがいをもっていけたらいいなと思いますね。

引退した馬って、かわいいですよ

梅田和田さんは、SNSでの発信も積極的にされていますよね?あくまで職人として技術的なことを大事にしつつ、競馬に初めて接する方などに対しても、いろいろな話題を提供しているのかなというイメージで和田さんのSNSを拝見しています。

和田能書きは言えると思うのでね、経験しているぶん(笑)でも、馬の面白さは、たぶんいっぱいあると思いますし、難しさもあると思うので、理解をしていただきながら、やりがいのある世界に興味を持ってもらえたらと思っています。馬はもちろん、かわいいですしね。でも競馬の世界を志すにあたって、競馬の馬は怖いところも難しいところもあると思うし、僕もケガの経験をたくさんしたので、そのへんは皆さんもケガのないことが何よりだと思います。やっぱり僕が馬に乗ってこんな勝ち方をしてきたように、「馬乗りはやめられんなあ」ってところまでいってほしいですよね。そういうのを探ってほしい。ただただ、仕事でしているとか、稼ぐためにやっているとはちょっと違う。“俺の人生の意味”くらいになったらいいと思いますけどね。

梅田夢のある職業なので、きらきらしていてほしいです!

和田まあ、でも大変みたいですよ(苦笑)。

梅田そうですよね。大変ですよね(笑)。

和田まあまあ、馬たちに関しても馬自身の頭数は多いですし、入れ替えの激しい世界なので、全ての馬を見てはいられないんですけど、ちゃんと命のある生き物なので、責任を持ってやらなあかんところがたくさんあると思います。

梅田RRCの引退競走馬の配信(YouTubeチャンネル「和田竜二の引退競走馬を追う!!」)も定期的にやっていらっしゃいますよね?どのあたりに面白さを感じて伝えたいと思って始められたのですか?

和田もっともっとやりたいくらいなんですよね。もっと陽が当たったら、もっと引退馬関係は面白いと思います。もともとは競馬サークル全体で問題意識を共有した「引退競走馬に関する検討委員会」がありまして、祐一(福永元騎手、現調教師)が抜けたら僕が入ったんですけど、そういう会議自体はだいぶ前からやっていたんです。TAWという団体(一般財団法人Thoroughbred Aftercare and welfare)はJRAが傘下の団体にしたんですが、その立ち上げまでの会議も4、5年前から始めていたのかな。僕は途中からの参加だったんですが、競馬サークル全体が集まって話していることですからね。でも、これは最終的にぶつかる問題として、人の問題とキャパが足りていないことがあります。馬はいっぱいいるけど、その全部を面倒を見るのは大変でも、理想は全部を見られたらということなんです。そうするための人とキャパとお金が必要で、そうなってきたら会議室で会議をしていても、それだけでは広がらないから、「僕はそれくらいしかできないんですけど、宣伝活動をやります」と言ったら、競馬会もぜひやってくださいみたいな感じだったのでやり始めました。いざ、それをやり始めたところ、もちろん角居(勝彦元調教師)先生のところは前からやっていて、馬術関係の人ともコネクトしていただきました。いい循環ができてきたところで、僕も加わっていろいろなイベントができたので、どんどん受け入れられて協力してもらっています」

梅田継続的に続けていかなければならないと思うことなので、調教師になられてからも今後続けていこうと思われているのでしょうか?

和田最初はバタバタすると思いますが、僕もちゃんと体を治したら乗馬もしてみたいしね。乗馬も楽しいですよ。僕は乗りたい方なので。大会とかに行ってもいいんですけど、乗馬自体は下手なんです(苦笑)。

梅田お体が良くなったら、RRCの大会に和田調教師が自ら出場されることも楽しみにしています。他の調教師の先生方も、出ていらっしゃる方はいますものね。

和田やっぱり皆さん、楽しいんですよ。好きなんですよ、やっぱり。

梅田ゆかりのある馬で出場したら盛り上がるでしょうね!

和田そうですよね。引退した馬って、かわいいですよ。落ち着いてきていてね。

梅田そうか!その馬の現役時代を知っていたら、なおさらですね。

和田競走馬はどうしても気が入ってしまうので、大変なことが多いですけど、この馬がこんなおとなしくなるんですかみたいな馬は結構いますし、もともと穏やかな動物ですしね。それでその先は養老牧場などでゆったりとしてくれたら和みますしね。養老牧場にも何回か見に行ったんですけど、やっぱりみんなのんびりと生まれた時の感じに戻っていて、いいなと思います。馬の好きな人が見学に来ることも多くて、いつ行っても誰か見に来ているし、そういうのもいいことだなと思いますね。

ヨーロピアンとアメリカンのミックスみたいな感じで自分の乗り方を

梅田和田さんは本当に競馬の業界を広く見ていらっしゃるんだなと思いました。アメリカ競馬もSNSでリツイートとかされていますが、海外競馬とかも結構見ていらっしゃるのですか?

和田SNSにはすごく情報がありますからね。今は動画サイトで海外の競馬も見られますし、いい時代ですよ。僕らがデビューした頃は、DVDとかでしか見られないから、かき集めて見ていましたよ。

梅田今はそれをご覧になって、息子さんとかと勉強したりとかもしているのでしょうか?

和田今ではしますけど、息子も昔は興味がなかったので。アメリカにも1回連れて行ったんですが、まだそこまで馬に興味のない時期でしたからね(苦笑)それこそ僕も小さい頃は興味がなかったですけどね(笑)。

梅田外国人ジョッキーさんで、この人は格好いいなとか、こういうふうな騎手はいいなあとか思う方はいらっしゃいますか?

和田アメリカはタイラー・ガファリオン騎手ですね。東海岸かな。めちゃくちゃ格好いい乗り方をするんですけど、知っている人は知っていると思いますよ。まだ31歳と若いですね。超格好いいですよ。オルティス兄弟とかよりは成績は下ですけど、上がってくると思いますし、大レースで結構勝っています。

梅田ケンタッキーダービーでシエラレオネに乗って2着だった騎手ですか!フォーエバーヤングが3着に惜しくも負けたあのレース、思い出しました!

和田瑠星(坂井騎手)を邪魔した奴(笑)まあ、その前から見ていた騎手ですよ。ガルフストリームパークのYouTubeばかり見ていました。フロリダの競馬場なんですけど、東海岸の競馬ばかり見ていましたね。

梅田そういうのも見たり、いろいろとチェックしていらっしゃるんですね。

和田晩年はそういうのばかり見ていました。日本の競馬を見るよりも、そっちの競馬を見てから競馬に行っていました。乗り方が全然違うな、って(笑)もちろんヨーロッパ系もずっと見ていて、最初はヨーロッパ系からでした。

梅田やはりヨーロピアンとアメリカは違いますか?

和田やっぱり馬場の質が違いますし、そうだからヨーロピアンスタイルみたいな乗り方になっていくんですけど、日本はアメリカの馬場に近い方だと思うので、なんかミックスみたいな感じで自分の乗り方を考えていました。すごい馬とかの場合には、ヨーロピアンはいいと言えばいいんですけど、見た目には格好良く乗りたいというのはあるので(笑)。

梅田そうなんですね。ファンとしては格好良く乗ってほしいです(笑)。

和田そういうものをミックスしながらやったら、よう分からなくなってきたりもしたんですけど、研究としては楽しいですね。

梅田あくまで好きなことですから、好きなものを見ていたいという流れですよね。

和田結局、体を動かす方が好きなので、乗っている方が好きなんでしょうね。勉強している方が苦痛でしたね(笑)。

梅田今はお体が痛いでしょうけど、早く良くなって、馬に乗りたいなっていうお気持ちですよね?

和田乗っている人たちを見たら、やっぱり乗りたいなと思いますね。空きすぎると、感覚が失われていくので。

梅田騎手の方でもそういう感覚なのですか。しゃべりの世界でも、しゃべっていないとスタジオの感覚を忘れてしまいます(苦笑)。

和田それはやっぱり何でも慣れが大事なんだなと思います。毎日やっていることは培われていくと思いますしね。

「岩元先生を目標に」とは常に言っています

梅田改めて和田調教師としてのこれからの目標はいかがでしょう?

和田やはり馬主様の大事な馬を預かっていくので、完璧な管理をして、いい状態で送り出してファンの方に喜んでいただける競馬をするのが、僕らの仕事になってきます。そのなかで安全性とか、いろんな要素を調教師は考えていかなければいけないし、もちろん結果を出さなければ生き残れない世界と思って頑張りたいと思います。

梅田今も開業にあたって、お忙しいですか?

和田今はまだあれですけど、9月くらいからはめちゃくちゃ忙しくなると思います。預けたいと言ってくださる馬主さんがいらっしゃるのはありがたいことで、僕は真摯に皆さんと付き合っていくしかないと思っております。「岩元先生を目標に」とは常に言っていますし、その道を踏み外さないように頑張っていくだけです。

梅田ありがとうございます。よかったら同じ騎手の道を歩んでいる息子の陽希君に期待することも聞かせていただけたらうれしいです。

和田それは一貫して、人を裏切らないように、ということですね。真面目過ぎてもアカンけど、根底は「人を裏切らずにしっかりとした仕事をしてくれ」ということですね。見てくれている人は見てくれていると思うので。僕の場合は本当に人に恵まれて、ここまでずっときました。息子は息子で自分と同じ環境ではやれないと思いますけど、技術職なので、技術を磨いたら誰かが見てくれていると思いますし、また僕とは違う道で必ず成功すると思ってやっていってほしいですね。

梅田素晴らしいお考えですね。技術に関することをおっしゃるのかと思ったら、競馬をやるにあたっての「人の道」のことをおっしゃったので、改めて和田さんの人柄を感じました。

和田根底はそうだと思いますよ。技術もどっちも大事ですけど、岩元の弟子としてやってきたなかでは「人を裏切らない」というのは根底に絶対ありますね。

梅田どっちも大事ですよね。私の心にも染みました。仕事をしていくうえで、一人では何もできませんからね。やはり技術はもちろんですが、ちゃんとしていくことが大事ですよね。私も背筋が伸びました。

和田他の人に言うわけじゃないですよ。息子だから言うんです(笑)。

梅田貴重なお話をたくさんしていただきまして、本当にありがとうございました!

(構成:スポーツ報知 坂本達洋)。

梅田 陽子
セントフォース所属。学習院女子大在学中より、日本テレビ「きょうの出来事」お天気キャスターとしてデビュー。2006年よりグリーンチャンネルキャスターとして、中央、地方競馬に携わっている。情報、スポーツ番組MC・リポーター、イベントMCとして活動中。馬とお酒と音楽(ピアノとチェンバロとパイプオルガンの演奏をします)が好き。

吉田 俊介
1974年北海道出身。(有)サンデーレーシングの代表で、ノーザンファームの副代表。中山馬主協会理事(広報インタビュー担当)。

※この記事は 2026年4月25日 に公開されました。

×