02. 果てしなく広がってゆく引退馬牧場の未来図
一緒に北海道でやってほしいみたいな話は彼から
梅田好きじゃないとできない、みたいなところはありますよね。そういうなかで、お2人が出会っていくわけですね。どういうきっかけで再び出会って、今に至ったのかお聞かせいただいてもいいですか?
茉莉亜一昨年にいきなり「CMで馬に乗る人を探しているんだけど、誰かいない?」みたいなLINEが来たんですよ。それで電話をしたら、牧場にいる芦毛の引退競走馬を本州に連れて行って、女優さんと2人乗りできる女性のライダーを探しているという話でした。年齢とか身長も何となく制作の方から言われていたみたいで、それがたまたま160センチの30代くらいの女性ということで、バッチリ私だったんですよね。それで彼もあまり思い当たらなくて、どうかなと連絡をくれたみたいです。撮影場所も、たまたま千葉だったんですよね。私の勤めている所からも近いというので、当時勤めていた乗馬クラブの代表に「知り合いから、こういう話が来たんですけど…」と話をしたら、「お手伝いをしてきたら?」とゴーサインが出たので、再会という感じですね。
梅田それが2年前のことですか?
茉莉亜2年前くらいですね。おととしの夏くらいに連れてきて、一緒に撮影に向けて頑張ってやっているなかで、そこで自然とまた仲良くなってお付き合いをして、その年の末には結婚していました。
梅田いろんな意味でタイミングもフィーリングも合ったんですね!よかったですね!
茉莉亜撮影で1、2週間くらい滞在していたんですけど、帰り際には…、何て言うのかな、付き合うみたいな話はないんですけど、一緒に北海道でやってほしいみたいな話は彼からされました。「それは何なんだろう?」と思いながら話を聞いていて、最終的には「付き合って」みたいな感じでしたね。
梅田仕事として一緒に来てほしいのか、本当にパートナーとしてなのか、どっちなんだろうなみたいな。
茉莉亜この通り、口下手で恥ずかしがり屋なので、くみ取ってあげるみたいな感じで(笑)。
一同笑顔。
梅田いいコンビですね!うまくパズルのピースが合ったというか。うん、うん!
茉莉亜そんな感じで年内に結婚して、寿退社という形で前の職場を去年の春に退職して、北海道に引っ越してきました。
私は「壮大なDIY」と呼んでいるんです
梅田ヴェルサイユリゾートファームさんが、Yogiboのコマーシャルをやっていらっしゃったのは、もっと前ですか?
崇文コロナくらいでしたか。
梅田お部屋でくつろぐ物なのに、Yogiboさんのクッションと馬、斬新でしたよね?あれは素晴らしいなと思いました。ああいうことも岩﨑さんの発案だったんですか?
崇文もともとYogiboさんがうちのことを知ったのも、役員の方、今の社長さんがきっかけだったんです。
吉田井形(剛士)さんですよね。うちのお客さん(クラブの会員)でもあるんですよ。
梅田そうなんですか!?当時から何か馬と絡められないかなと思っていらっしゃったのか、そのあたりのマッチングがよかったのでしょうか。
崇文せっかくなら(井形さんの)会社の仕事で馬を助けたり、何かできないか、そういうものが取っ掛かりだったようです。
梅田化学反応ですよね。好きなものと好きなものをかけ合わせたら、絶対にうまくいくと思うんです。こうやって皆さんとインタビューをさせていただいていると、好きなものなら全然違うもの同士でも、すごく爆発的なヒットを起こせるように感じます。(イラストレーターの)おがわじゅりさんの時もそうだったんですけど、大事な人のために絵を描いていたら、皆さんから評価されてあれよあれよと評判になっていって、気が付いたら幸せの連鎖が起きていた、みたいな。Yogiboの井形さんも、自分の好きなものと好きな仕事をかけ合わせて、ああいうヒットを生んだのですね。そしてその後に茉莉亜さんと知り合った感じだったんですね。岩﨑さん、その時は楽しくてしようがなかったでしょう?
崇文そうですね(笑)。
梅田牧場も知ってもらえるし、馬もいっぱい助けられるかもしれないし、奥様ともお付き合いが始まって、また新たなステージが始まった感じですよね。
茉莉亜実は彼はどちらかと言うと現場タイプで、私は「壮大なDIY」と呼んでいるんですけど、もともと中学生ぐらいの時に乗馬クラブのの部屋をひとりでリノベしたことがあるそうです。もちろん、許可は取ってやったみたいですが、その部屋をどうにか自分がくつろげて、みんなもくつろげる空間にしたいというので、DIYをやったみたいです。
梅田すごい!
茉莉亜それくらい当時から物を作ったりとか、自分やみんなにとってもいい空間を作りたいというのがあったみたいで、それが今はすごく大きいスケールになって、こういう牧場になったんだと私は思っています。当時を知っている方の話を聞いたりすると、「小さい頃から崇文君、好きだったもんね。DIY」って、(共通の友人の)ママたちが言ってたよね?
梅田ゼロから1を作るのが好きなんですかね。
茉莉亜誰もやっていないことをやるのが好きで、誰もやっていないんだったら自分がやっちゃえばいい、ってことだよね。
梅田そこでファストフードのお店がなければ、自分がやってしまおうと(笑)。
茉莉亜おいしいハンバーガー屋さんやカフェがないなら自分でやろう、だよね。
梅田すごい。やっぱり経営者タイプでいらっしゃいますよね。
茉莉亜MBTI(性格診断指標の一種)もINFJだもんね。そういう経営者に多いタイプでした。
リトレーニングからお客さんにも乗っていただく新しい体験の形を
梅田どんどん広げていってらっしゃると思いますけど、最近はどんなことがありましたか?
茉莉亜皆さんに知っていただけるようになって、サポーターの会員さんも増えてきました。クラウドファンディングやYogiboさん、TAWさんのご支援で厩舎が建てられたりとか、皆さんのお陰でいい方向に進んできています。それでも何か足りないな、何か新しいことをやりたいな、と思っていたタイミングで、たまたま私と出会ったんですよね。それで「リトレーニングだ!」って。
梅田施設が整ってきて、次は馬自身の方に目を向けられたのですね。
茉莉亜そうです。何十頭かの馬が幸せに余生を暮らせるようになって、お客さんと触れ合っていただいて、セカンドライフ、サードライフを進めているなかで、放牧されていて、お客さんと触れ合ってもらうだけだと、何か物足りないな、と感じていたみたいなんです。ちょうど私もリトレーニングをやりたいと思っていて、今まで乗馬クラブでも引退した競走馬と接する機会は多々あって、乗ってはいたんですが、1から自分でというのはなかったので、タイミングがバチッと合いました。
梅田ソフト面、ハード面の全てで、さらにレベルが上がっていくという状況ですね。
茉莉亜はい、それで今、リトレーニング施設も現在進行形で作っていて、通年通してトレーニングができるようになれば、お客さんにも乗っていただく形で新しい体験ができるのではないかと思っています。
梅田リトレーニングって、実際に時間と労力、お金もかかると思うんですけど、1年、2年通してとか、どのくらいの時間が必要ですか?
茉莉亜誰が何のために乗るかにもよると思います。馬にも向き、不向きがあったりするので。2025年5月にクリノガウディーという馬が入ってきて、リトレーニングをやってみようとなりました。トレーニングを始めたら、結構向いていて、4ヶ月ぐらいでノーザンさんの試合に連れて行けました。試合に行く度に心身共に成長していってくれて、RRC(引退競走馬杯)という大会があるんですけど、その北海道予選に間に合ったので、ガウディーと一緒に出て、8位に入賞してくれたんですよね。本当にめちゃめちゃ立派なことです。私たちがやりたいことは、一般の方にも安全に乗っていただける馬作りなので、それには1、2年、何年かかるかな…って感じですね。
梅田茉莉亜さんが乗るからこそ、すぐにそこまでもっていけたわけですね。
茉莉亜初心者の方が乗ったら、たぶんまだ危ないので穏やかになるまでには、まだ時間がかかるかな、というところですね。
梅田一般の方に乗って楽しんでいただくことが大事なことですよね。
茉莉亜北海道で乗馬体験をして楽しかったから、本州に帰ってからも乗馬クラブに行ってみようとか、そういうきっかけにもなれたらいいなと思っているので。安全にお客さんを乗せられるように、今は頑張っている感じですね。
梅田今はリトレーニング中の子たちも含めて何頭くらいいらっしゃるのですか?
茉莉亜全部で約50頭います。
梅田そうなんですか!始めのローズキングダムから…。
茉莉亜8年でここまで大きくなりました。
ファンの方だけじゃなくて、新しい方々に知っていただく機会に
梅田今やスタッフさんも、2つの牧場(お母さまの生産牧場と、崇文さんの養老牧場)があって部門が違うと思いますけど、どのくらいまで増えたのですか?
茉莉亜彼(崇文さん)のやっている牧場はパートさんも含めて15人くらいですね。カフェとか宿泊とか、いろんな形でやっているので。
梅田宿泊施設もあるし、カフェとかもある有名な牧場になりましたもんね。ノーザンホースパークに行くか、Yogiboヴェルサイユリゾートファームさんに行くか…、というくらいのところになりましたもんね?
茉莉亜いえいえ、まだノーザンホースパークさんの足元にも及びません(苦笑)。
吉田隣にうちの牧場があるんですけど、毎回訪れる度にきれいになっていくので、すごいなと思っています。あ、もう厩舎ができてるとか(笑)。
梅田牧場同士、ご近所さんなんですね。
吉田そうなんです。でも、中に入ったことはなかったので、お話を聞けてよかったです。
茉莉亜たまにうちの馬が放馬して、ノーザンさんにお邪魔しているみたいです…。
吉田逆もありますからね。うちもね(笑)。
梅田今や宿泊施設やカフェも増えましたけど、この間、東京でもイベントをやっていらっしゃいましたよね?
茉莉亜やっていました。二子玉川のライズで、引退競走馬の余生や支援の取り組みを広く知ってもらうことを目的に、馬とのふれあいやグッズ販売、Yogiboのソファ体験なども出来るイベントでした。
梅田いろんな方に知っていただくすごくいい機会だなと思いました。ああいうことも積極的に2人の呼びかけでやっていらっしゃるのですか?
茉莉亜Yogiboさんとタッグを組んで、一緒に面白いことをやろうという企画が実現しました。今年もどこでやるかは決まっていませんが、また馬を連れて行って、お客さんと触れ合っていただける機会は作っていきたいなと思っています。
梅田あの時も馬を連れてでしたもんね。2、3頭いましたっけ?
茉莉亜この前の二子玉川は2頭連れて行きました。ダンカークとヒルノダムールです。2頭とも種牡馬をやっていたんですけど、去勢して比較的おとなしい子たちなので触れ合っていただきました。
梅田評判はいかがでした?
茉莉亜すごかったよね?何人来たんだっけ?(SNSの)インプレッションもすごかったんだよね。
崇文5000人くらいでしたね。
茉莉亜「TAW」さんの補助で、今回はやらせてもらいました。「Thoroughbred Aftercare and Welfare」という一般財団法人です。
梅田ものすごい評判の企画で、また続けていきたいですよね。
茉莉亜やっぱりなかなかこちらに来られない本州のファンの方もいるので、イベントをやることによって、ファンの方だけでなく、新しい方々に知っていただく機会にもなるので、引き続きやっていきたいと思っています。
梅田東京だと馬と触れ合う機会って、ああいう感じじゃないとなかなかないですもんね。
茉莉亜ど真ん中でっていうのは、なかなかないと思います。
福島の復興のお手伝いができないかと考えています
梅田私もびっくりしました。二子玉川に馬がいるんだ!って。物事を動かす規模が大きかったと思うので大変だったと思いますけど、ぜひ続けていただきたいなと思います。今後は、どういう方向に向かっていきたいですか?
崇文本州の方に同じような形で牧場を作りたいと思っています。今は双葉町の方に牧場を作って、引退馬を集めて福島の復興のお手伝いができないかと考えています。やはり福島も馬と関わりが深い地域なので、それを絡めてできないかというお話をいただいて、その話を詰めているところです。
梅田そういうお話を進めていらっしゃるのですね。牧場のお名前も気になります。
崇文ネーミングライツを公募するなどすれば、広告効果の高い牧場になるとは思います。Yogiboさんみたいに冠を付けてくれる会社があればいいなと思います。
梅田本当にうまく人や気持ち、お金が回っていく素敵な牧場になるといいですよね。
茉莉亜双葉町も震災の後に住んでいた方が、ほとんど戻ってきていないみたいなんです。雇用も創出しなくてはいけないので、一役買えればいいなと考えています。
梅田今のお話は会社として大きなものでしたけど、個人としてやりたいことはありますか?
崇文う~ん、ないですかね。温泉を掘りたいくらい?(笑)。
一同爆笑。
茉莉亜それはずっと言っています。温泉大好きなんで(笑)。
梅田温泉と馬があったら、無敵ですね(笑)。
茉莉亜ウマ娘のモデルになっている子がうちに何頭かいるんですけど、ゲームのなかでウマ娘たちが温泉に入るエピソードがあるんですって。それもあって、温泉を掘ったら話題作りにはなりそうだよね、という話はしています。ウマ娘になった子で言うと、ワンダーアキュート、トランセンド、エイシンフラッシュ、タニノギムレットの4頭がいます。
梅田展示もいろいろされているみたいですね。
茉莉亜ウマ娘のパネルがあって、それはファンの方にとっても好評です。お写真を撮ってから帰って行ってくださる方が多いです。
梅田やることがヴェルサイユリゾートファームさんは、ちゃんと早いですよね。ファンの方を喜ばせることをちゃんとつかんでいます。タイミングは大事ですもんね。
茉莉亜めちゃめちゃ大事ですね。「鉄は熱いうちに打て」と言いますけど、まさにそれだと思います。
梅田みんなが楽しいというのは大事ですよね。馬も楽しい、人間も楽しい、大変なこともあると思いますが、それを吹き飛ばして何よりお2人が楽しそうなのがいいなと思いました。
茉莉亜何だかんだ楽しくやっています(笑)。
梅田それでは改めて最後にメッセージをよろしくお願いいたします。
茉莉亜お一人お一人が引退した馬のことを考えていただくきっかけになればいいなと思います。1頭でも多くの馬が余生を幸せに過ごせるようにと常日頃思っています。
梅田ちなみに「ザ・ロイヤルファミリー」のドラマはご覧になっていましたか?
茉莉亜見ていました。ああいうふうに最後は栗須さんが、引退馬の牧場をやってという形で今回のシーズンが終わったのは、私たちにとっても、彼が今までやってきたことが報われた感じがして、私にはグッとくるものがありました。
梅田そうですよね!
茉莉亜彼も始めは1人でやっていて、叩かれることも多かったと思いますので。全国で流行ったドラマのなかで、養老牧場を皆さんに知っていただけるすごくいい機会になったとも思います。
梅田ああいうのを見ていると、岩﨑さんも俊介さんも自分とかぶるところがいっぱいありましたよね。
吉田僕は悪役の方ですから(笑)。
梅田そんなことないですよ。誰一人抜けてはならないお話だったと思いますから。
吉田めちゃめちゃ(撮影に)協力したら、悪役の方の“服”でした(笑)。
梅田いえいえ、でも楽しかったですよね。続編もやってほしいですよね。そのあたりも楽しみです。今日はお2人も俊介さんも、お忙しいなか楽しいお話をありがとうございました。
(構成:スポーツ報知 坂本達洋)

梅田 陽子
セントフォース所属。学習院女子大在学中より、日本テレビ「きょうの出来事」お天気キャスターとしてデビュー。2006年よりグリーンチャンネルキャスターとして、中央、地方競馬に携わっている。情報、スポーツ番組MC・リポーター、イベントMCとして活動中。馬とお酒と音楽(ピアノとチェンバロとパイプオルガンの演奏をします)が好き。

吉田 俊介
1974年北海道出身。(有)サンデーレーシングの代表で、ノーザンファームの副代表。中山馬主協会理事(広報インタビュー担当)。