02. 父から受け継いだ銀座No.1のエンターテイメントと愛馬
文化に貢献しようと思っていたのだと思います
梅田博品館劇場も、このビルができた時からあるのですか?
伊藤劇場はビルができた時からです。おもちゃを売るようになったのは少し後になります。劇場の方が4年くらい先ですね。
梅田そうなんですか。どういう経緯で劇場を作ることになったのでしょうか?
伊藤うちの父が最初にこのビルを建てる時に、上の方が3フロアくらい空いていて、何をやるかと考えた時に、当時、銀座通りには一時的に劇場ができていた時期もあったようですが、常設の劇場がなかったので、あってもいいんじゃないかなということで作ったそうです。当時のそういうキャパシティーの小劇場と言われるものにしては、早かったと思います。うちの父は去年亡くなったのですけど、あんまり芝居にはもともと興味がない人で、上手(かみて)、下手(しもて)を知らなかったくらいなので。台本を見て「上手(じょうず)に登場って何かな?」というタイプだったので(笑)。
梅田大好きだから作られたのかと思っていました。やはり文化的なものを、ということだったのでしょうか?
伊藤文化に貢献しようと思っていたのだと思います。たぶん芝居を見るより、馬が走っているのを見る方が好きだったと思いますが(笑)。
梅田なるほど(笑)。ちなみに博品館さんについて知っていただきたいことなどはありますか?
伊藤おもちゃって、特にうちは「遊ぶ品」と書いて「遊品(ゆうひん)」という言葉を使っているんですけど、「遊び心」って、大人でも子供でも老若男女を問わずあるじゃないですか。そういうものを刺激する商品ということで、そういう言い方をしています。あと、お子さんの物って、どんなセレブやVIPの方でも、人任せにしないで自分で選びに買いに来るというのが基本なので、いろんな方にお会いできる機会があります。
梅田どんな方がいらっしゃったりするのでしょうか?
伊藤亡くなったマイケル・ジャクソンさんは、3回か4回いらっしゃいましたね。スティーヴィー・ワンダーさんとかもですね。貸し切りまでしたのは、このお2人やジョニー・デップさん。閉店後にいらっしゃいました。意外と普通の物を買われるんですよ。マイケル・ジャクソンさんは、ちょっと変わっていて、飾ってある完成したジグソーパズルを買ったりしていらっしゃいましたね。2度目に来ていただいた時に、最初に撮らせていただいた写真にサインをしていただきました。
梅田すごいVIPや王様などがいらっしゃることもあったりとか…。
伊藤タイの王様がいらっしゃったことはあったと思います。さっきも言ったように、基本的に子供の物って自分で選ぶじゃないですか。なので、そういう方々が直接いらっしゃいます。(フランスの)シラク元大統領とかもお見えになりました。シラク大統領が格好良かったのは、お台場の自由の女神の点灯式の後にいらっしゃったのですけど、普通に営業中で自分のお財布を出して、その当時はユーロじゃなかったので、フランと円が入ったお財布から普通にお金を出して買っていらっしゃいました。親日家の方で、よく公務の合間にいらっしゃいました。


もう1回、この同じ勝負服で馬が走ってくれたら
梅田素敵なお話ですね。馬のお話もうかがわせていただきますが、伊藤様はお父様の代から馬主でいらっしゃったとお聞きました。先ほどもお父様が、かなり競馬がお好きだったとお話いただいたように、「リンガス」の冠名で走らせていらっしゃっていました。お父様は、どういうきっかけで競馬をお好きになったのでしょうか?
伊藤好きだったですね。きっかけは知りませんが、好きだから馬を持ったのだと思います。そんなに幼心にというほど古くはないですが、僕がたぶん大学生くらいの頃だと思うので、それでも30年以上は馬主をやっていたと思います。父が亡くなった時に1頭か2頭、持っていた馬がいたんですよ。それが宙に浮いてしまうのもあれなので、それで相続馬限定馬主になりました。僕もほどよく競馬が好きなので(笑)。馬は生き物ですし、3歳未勝利だと出られるレースも限られてくるので、急いで手続きを進めて相続馬限定馬主になりましたが、1銭も賞金が入らないまま未勝利で引退してしまったので、改めて個人で馬主資格を取り直すことにしました。(「ザ・ロイヤルファミリー」で中条耕一役の)目黒蓮さんが5年かかって馬主になっていましたが、僕は2か月でした(笑)。
梅田ドラマのなかでは最後は目黒蓮さんも馬主さんになりましたものね。
伊藤意外と相続場限定馬主資格を急いで取ったって言うと、あのドラマのお陰で皆さんやけに詳しいですね(笑)。何頭かいて、未勝利で引退しなければ、ずっとレースに出られるじゃないですか。そうするとその間は限定馬主のままでいられるらしいのですけど、自分の場合は引退してしまったので、すぐに切り替えました。
梅田それはいつ頃のことですか。
伊藤昨年の11月くらいになるのかな。父は2月に亡くなったので。相続馬限定馬主の資格を取った時に、そのまま限定の解除というのをやろうと思っていたら、その手前で馬がいなくなってしまって空白ができたので新規で取り直しました。
梅田これから改めてオーナー名義の馬が走るわけですね。
伊藤もう1回、同じ勝負服で馬が走ってくれたらいいと思っています。(服色は)父も他の人から継いでいるものなのですが、そのまま引き継ぎました。名前はそのまま(リンガスの冠名を)つけるかどうかは、まだ馬がいないので分からないですが。
梅田これからお持ちになりたい血統などはございますか?
伊藤時期が時期で、馬がいないのもつまらないので、ノーザンファームの吉田勝己さん名義のオーナーズに申し込みました。今、明けて2歳ですね。父はアドマイヤマーズで、母はザイラです。
梅田それだと今年デビューになりますから、楽しみですね!
伊藤走ってくれたらいいですね。



圧倒的にNo.1の存在になりたいなとは思っています
梅田イベントコーナーにも飾られていましたけど、中山馬主協会が会員の馬主さんにプレゼントする「愛馬おめでとうキャンペーン」の馬がありますよね。
伊藤あれは今の中山馬主協会の西川賢会長とうちの父が相談して作ったもので、うちの父が亡くなった時も、柴田善臣騎手が乗って勝ってくれた新潟のレースが、うちの父のなかでは一番大きいレースだったので、その時の優勝記念のぬいぐるみへ善臣騎手にサインをしていただいて、それは社葬の時に飾らせていただきました。
梅田そうなんですね。今もずっとキャンペーンは続いていますし、中山馬主協会の会員さんが勝ったら、それがどんどんコレクションされていくのは素敵なことです。もし伊藤会長が勝ったら、「お帰りなさい」みたいな感じで“里帰り”するなんてことになったらいいですよね。あと今後、将来に向けて競馬のことでもお仕事のことでもやりたいことがあれば、教えていただきたいと思います。
伊藤まだ競馬については初心者なので、まずやりたいこと、できることは何かな、と考えているところですが、仕事に関しては、先ほど申し上げたように日々のおもちゃ販売という短期の事業、中期の劇場と長期の不動産というものがあって、それに一番新しい事業としてこのビルの5階に中華料理の「桃花源(とうかげん)」というのがあるんです。四川料理なのですが、割と中山馬主協会の方々にもお使いいただいています。まだ、そのお店をちゃんとやっていこうという段階ですけど。
梅田私も中山馬主協会の役員さんのお話で「伊藤さんのところの中華料理がおいしい」と聞いたことがあります(笑)。なんだか、いいですね。全て五感を楽しむというか、劇場もそうですし、おもちゃも楽しいし、胃袋も、ですね。
伊藤銀座でエンターテイメントみたいな切り口で考えた時に、圧倒的にNo.1の存在になりたいなとは思っています。
梅田銀座でNo.1となったら、世界でもNo.1ということですよね。
伊藤そうなるんですかね。いつも新入社員に話すんですけど、2018年までシャネルの日本の社長を務めたリシャール・コラスというフランス人がいるんですけど、その方とお話した時に聞いた話では、彼らの給料って本国の人が決めるんですよね。その時の売り上げではなくて、自分のブランドの地位をどれだけ高めたかというのが、彼らの査定になるんですよ。最初に一番売り上げ良かった時、(バブルの時期に)“シャネラー現象”というのがあったんですけど、とにかく違法に出回った偽物とかまで含めて、とにかく流行った時があったんです。その時は売り上げがグンと上がったんですけど、一番給料は下がったそうです。「品位が落ちた」というので。その後に表参道に店舗ができた時に限定の口紅やマニキュアを出してすごい列ができたのですが、それはフランスでニュースにならなかったそうです。別に関係ないと。それで一番給料が上がった時はと言うと、銀座通りの2丁目にビルを買った時で、それは本国でもニュースになって、それだけで自分の給料が上がったそうです。彼が言うには「銀座通りというのは、唯一海外で話題になる通り。だから銀座の表通りのビルを買うというのが一番の成功だった」という話をしていたので、そういう意味では世界的にニュースになる「通り」なんだなと思います。
梅田1986年には世界一の玩具店ということでギネスブックにも掲載されていますものね。これからも歴史ある玩具店・施設として唯一無二の存在であり続けていただきたいです。そして伊藤さんの愛馬の活躍もお祈りしております。今日はありがとうございました!


(構成:スポーツ報知 坂本達洋、Photograher:橋本健)

梅田 陽子
セントフォース所属。学習院女子大在学中より、日本テレビ「きょうの出来事」お天気キャスターとしてデビュー。2006年よりグリーンチャンネルキャスターとして、中央、地方競馬に携わっている。情報、スポーツ番組MC・リポーター、イベントMCとして活動中。馬とお酒と音楽(ピアノとチェンバロとパイプオルガンの演奏をします)が好き。