ゲスト
田中淳司 調教師 ホッカイドウ競馬

02. 強い馬がたくさん出て挑戦の場が広がるといいですね。

強い馬がたくさん出て挑戦の場が広がるといいですね。
ホッカイドウ競馬で活躍する田中淳司調教師をお迎えしてお届けする梅田陽子の「ホースと共に!」。門別競馬馬では厩舎の改築工事が進んでいます。後編では、田中淳司調教師が感じる地方競馬での変化などのお話を伺いました。

2018年、ジャパンCに参戦

梅田田中淳司厩舎の馬といえば、ファンとしてはハッピーグリンも欠かせない存在です。

田中何度もJRAに参戦しましたし、ホッカイドウ在籍のまま香港チャンピオンズ&チャターC(8着)のために香港遠征をすることもできました。何より、2018年のジャパンCに参戦できたのは嬉しかったですね。

梅田ジャパンCに思い入れが?

田中子供の頃にロッキータイガーが、ジャパンCで2着したのを見て感動しました。地方競馬の馬でもやれるって。だから、いつか自分もと思っていたんです。

梅田この時は、私も応援していました。

田中レース前、服部茂史騎手と、勝ちに行く競馬をするぞと誓いました。最内のアーモンドアイの隣、2枠2番だったのは良かったですね。当日は内の軽い馬場でしたから。前を行くアーモンドアイにピタリとつけ、ジワジワ伸びました。結果は7着でしたが、直線にハッピーグリンが入ってきたのを見て、吠えましたね(笑)。

梅田レコードタイムで勝ったアーモンドアイと戦ったんですもんね。凄いです。

田中その頃のルールでは、5歳以降の地方馬がJRAのレースに出るのは難しくて、馬主さんには申し訳なかったですね。

自主的に仕事をしてくれる自慢のスタッフ

梅田田中厩舎には、騎手もたくさん所属されていますね。

田中今、うちには4人の騎手が所属しています。一番、年長の服部は49歳ですからね。次の道を考えてもいい頃なんでしょうが、まだ馬に乗るほうが楽しいようです。開業時に僕が手助けできるうちに、試験に合格してくれるといいんですけど。いま、うちの厩舎で働いてる息子も、調教師を考える時期がくるかもしれませんし。

梅田息子さんも、競馬の道に進まれたのですね?

田中はい。でも、僕と息子では育った環境が全然違うんです。僕は厩舎の横で育ちましたが、息子は門別の厩務員アパート暮らし。全然、競馬には興味がなさそうでした。

梅田先生の子供の頃と、大違いですね。

田中ホント、そうです。それが、大学の夏休みに父の厩舎でアルバイトをしたいと言い出して。馬房掃除などを手伝っていました。そのうち、乗馬クラブに通い出したんですよね。

梅田それで、卒業後に先生の厩舎で、働いているんですね。息子さんと一緒に働くのはいかがです?ビシビシ鍛えてます?

田中いやいやいや。うちの親父の時代じゃないですから、厳しい調教師なんて、そうそういないですよ。僕自身、スタッフに注意することはあっても、叱ったり、怒鳴ったりはしません。

梅田たしかに、今は頭ごなしに怒ったら…ね。

田中それでも、みんな自主的に仕事をしてくれています。うちの厩舎には開業前の調教師さんが毎年、研修で何人かくるんですけど、スタッフの仕事ぶりを見て、凄いと褒めてくれます。長年、同じ仕事をしていれば、サボリたくなったりしますよね?でも、ベテランが率先して仕事をし、チームワークも作ってくれています。自慢のスタッフです。

地方競馬での「いい変化」

梅田高いモチベーションを維持していられるのは、ナゼでしょう?

田中他場の重賞へ遠征に行き、レベルの高い競馬を目指しています。そこで勝つためには、どんな仕事をすればいいか、分かっているのではないでしょうか。

梅田素晴らしいですね。そういえば今、門別競馬馬は厩舎の改築工事が進んでいるんですよね?

田中はい。今の時代に合った厩舎デザインをということで、大手牧場さんにもアドバイスをいただきました。今年10月に完成予定だそうで、11月の門別開催が終わってから、新しい厩舎への引っ越すことになりそうです。全厩舎にウォーキングマシンがついているんですよ。

梅田それは、画期的ですね。

田中現状の人手不足解消には、ウォーキングマシンは必要不可欠で厩舎では4機使っています。また、うちの厩舎にはまだいませんが、門別では多くの厩舎で、沢山の外国の方たちが働いています。彼らの人数が増えるごとに、その国々のコミュニティーも広がっているようですよ。向上心のある方も、たくさんいて、どんどん仕事を覚えてくれるそうです。ありがたいですよね。

梅田そのほかにも、地方競馬に「いい変化」はありますか?

田中昨年から、ダートグレードの門戸が広くなり、全国の多くの競馬場へ遠征に行けるようになりました。そういう大きな舞台を、どんどん目指していかなくてはと思っています。JRA馬に地方馬が立ち向かい、勝っていくのは地方競馬の醍醐味ですから。かつては、オグリキャップやハイセイコーのようなアイドルホースもいましたし。

梅田さらに、近年は海外に遠征する馬もいます。

田中そうですね。昨年、今年とイグナイターの海外遠征がありました。門別からは、コスモバルクが2006年のシンガポール航空インターナショナルCを制しています。そんな風に強い馬がたくさん出て挑戦の場が広がるといいですね。

(構成:スポーツ報知 志賀浩子)

梅田 陽子
セントフォース所属。学習院女子大在学中より、日本テレビ「きょうの出来事」お天気キャスターとしてデビュー。2006年よりグリーンチャンネルキャスターとして、中央、地方競馬に携わっている。情報、スポーツ番組MC・リポーター、イベントMCとして活動中。馬とお酒と音楽(ピアノとチェンバロとパイプオルガンの演奏をします)が好き。

吉田 俊介
1974年北海道出身。(有)サンデーレーシングの代表で、ノーザンファームの副代表。中山馬主協会理事(広報インタビュー担当)。

※この記事は 2025年5月2日 に公開されました。

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