きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

蘇りし魔の桜花賞ペース

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牝馬クラシック第1弾桜花賞は、逃げてレースを引っ張ったレッツゴードンキがそのまま直線でも逃げ残り2着に4馬身突き放しての優勝となりました。牡馬を蹴散らし快進撃をつづけてきたルージュバックは最終的には単勝1.6倍まで支持を集めましたが、直線後方から追い込みにかけるもレッツゴードンキに離される一方となり、馬券圏内にすら絡めずに9着の結果でした。初の同世代牝馬同士のレースで牡馬相手とはペースが異なるとはいえど、ここまで大きく敗れるとは予想外の結果でした。

今回勝敗を分けたのはレースのペースと鞍上の判断でした。
逃げたレッツゴードンキは、前半600mの通過が37秒1で1000mの通過が1分2秒5と超スローペースに落とし込みスタミナを温存。競りかけられることなく貯められた末脚で逃げ切りを図ることができました。勝ちタイム1分36秒0とレースが1分36秒台での決着は、コース改修前の1997年キョウエイマーチまでさかのぼらなければならず、当時は不良馬場でのレースでしたから、今回の桜花賞はそれほど超がつくスローでの決着でした。

今回の桜花賞を見て脳裏に浮かんだのが「魔の桜花賞ペース」の言葉でした。
かつて桜の舞台はスタート後間もなく2コーナーのカーブにさしかかることから、各馬のポジション取りでコーナーに殺到。そのままペースが落ちずにハイペース、乱ペースとなり逃げ先行馬が自滅し、ときに波乱をつくりだす結果にもなっていました。阪神競馬場が改修されて以降、消えたと思われていた「魔の桜花賞ペース」が形をかえてこうして再び目の前に現れるとは、レースの抱える物語に驚かされます。

そしてもうひとつ。2着にはクルミナル、3着にはコンテッサトゥーレといずれもチューリップ賞組が入りました。勝ったレッツゴードンキはチューリップ賞3着、クルミナルはチューリップ賞11着、コンテッサトゥーレはチューリップ賞6着からの巻き返しです。桜とチューリップの相性の良さを改めて実感させられます。今年も、3月のチューリップはまだつぼみなれど、桜が咲く時期に花開くチューリップが桜の幹下を彩らせた結果となりました。

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