きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ドバイ千夜一夜物語【前】

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アラビアンナイト=千夜一夜の物語は、妻の不貞から女性不信に陥った王が、一夜を共にしては相手を殺すという蛮行を繰り返すのを止めるために、美女シェヘラザードが身を挺して毎夜興味深い話を聞かせ続けるという構成になっていました。話が佳境にさしかかると『続きはまた明日』となり、王は彼女を殺すに殺せないまま日が過ぎ、遂に悔い改めたのだそうです。

競馬をシェヘラザードにできないか、モハメド殿下がそう考えたのかどうかは知りませんが、語り継げるようなドリームレースの数々を一夜に集めて。ドバイワールドカップデーはアラビアンナイトの理想を現代に呼び起こそうとしたものなのでしょうか。その理想復興の祭典、今年は久しぶりに千夜一夜の物語並みに面白いものになりそうです。不評だったオールウェザーをあっという間に改修し、ゴドルフィンによる大型トレードを含めて世界クラスの強豪招聘に力を注いだのでしょう。サッカーのイングランド代表マイケル・オーウェンさん、香港の人気俳優サモ・ハン・キンポーさんなど話題に事欠かない著名人馬主も愛馬を出走させます。良いメンバーが集まりました。

優勝賞金600万ドル=約7億円超のドバイワールドCは、国家プロジェクト並みの果断俊敏な馬場改修も功を奏して“ダート神聖帝国”アメリカから昨年の二冠馬カルフォルニアクロームを筆頭に有力馬がやって来ます。芝しか走ったことのない日本馬エピファネイアの自信満々のダート挑戦もかえって興味深く思えてきます。馬場状態次第では思わぬ波乱もありそうですが、期待は真っ向勝負の潜在能力比べ、そんなワクワク感が漂ってくる今年の大一番です。

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