きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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戦争を知らないので軽々なことは言えませんが、敗戦というのは、きっとこんな気分なのでしょうね。圧倒的な力に有無を言わさずねじ伏せられて、しばらくは立ち上がる気力も湧いてこない、多くの日本ホースマンが脱力感に襲われた凱旋門賞でした。

それにしても420キロ台と推定される小柄な牝馬、トレヴの強さは想像を絶するものでした。展開に恵まれたわでもなく、真っ向から戦いに臨みファルスストレート(直線手前の偽りの直線)で仕掛け、負かしにかかった武豊騎手&キズナをあっさり退け、直線で追いすがるオルフェーヴルを突き放しました。3歳牝馬に有利な斤量差も関係のない勝ちっぷりでした。

1981年、第1回ジャパンCで日本勢は手も足も出ず、浦和からやって来たゴールドスペンサーの5着が精一杯、この先50年は勝てないと言われた時の気分に似ています。あれから30年余り、JCはホームの利を生かして、互角以上の勝負を挑めるようになりましたが、アウェイで勝ち切るには、まだ厚い壁があるようです。

見方によっては、数十年に一頭の怪物が潜んでいた、と身の不幸を慰めることもできるでしょう。トレヴがいなければ日本馬ワンツーも可能な流れでした。しかしそんな仮定は何の癒しにもなりません。できることは、30年余り前の敗戦と同じように、今回の敗戦を真正面から受け止めていくことでしょう。

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