きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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秋の中山開催が幕を閉じました。フィナーレのG I・スプリンターズSは、香港馬ウルトラファンタジーが逃げ切って締めくくりました。戦前から日本スプリント界の脆弱さが危惧されていましたが、その通りの結果になってしまって、ちょっとがっかりです。

それはさておき、スプリンターSであらわになったのはコース取りの問題です。逃げ切ったウルトラファンタジーが内を通るのは当然ですが、2着(4着に降着)のダッシャーゴーゴー、4着(繰り上がり3着)のサンカルロも内を伸びてきました。降着騒動もインコースを巡ってのやり取りの結果でしょう。3着(繰り上がり2着)のキンシャサノキセキは、内を通った馬とは明らかに勢いが違っていました。地力だけで押し上げてきたのだろうと思います。

少し前までは“展開”が重要な予想ファクターでした。ところが最近は“位置取り”とか“立ち回り”とか、要はコース取りが騎手の腕のみせどころになってきました。いちばんの原因は造園技術の進歩かもしれません。

昔は開催の最終日ともなると馬場は荒れて、とくにインコースは力のいる状態になっていました。当然、脚に余裕のある馬は外に進路をとり、逆転を狙って一か八か荒れた内を衝く馬もいました。

ところが現在では昨日のような最終日でも馬場は良好で、全馬がインに殺到するのは当然です。気性的に問題があるキンシャノキセキのような馬だけが、仕方なく外を回すような格好になります。技術の進歩がかえって競馬を難しくしています。

散水などによる馬場の均一化という方法もあります。でも今年の英1000ギニーでは散水の失敗で全馬が特定のコースに集中して大混乱を起こしました。イギリスでもそうなのですから難しさは半端じゃありません。

進歩ばかりが人や馬を幸せにするわけじゃない、そんな当たり前のことを考えたスプリンターズSでした。

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