きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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東京開催は3週目を迎えるというのに新馬戦を中心に異常としか言いようのない除外ラッシュが続いています。

毎年この時期に起こる年中行事みたいになっていますが、とくに今年は中京開催が改修中で小倉に代替されたため、深刻さの度合いもひとしおのようです。

先週は16頭立てのレースで31頭が除外されました。今週も東京は土曜4Rが5頭、6Rが18頭、日曜2Rも10頭と計33頭がレースに出ることすらかないませんでした。これに対して京都は日曜5Rの2頭だけに収まっています。小倉では土日ともに新馬戦ゼロ、番組すら組まれていません。

この不均衡は番組編成の不均衡に原因の本質があるのですが、栗東と美浦との立地条件の微妙な差も影響しています。高速道路網が整備され馬運車の改良も進んだ現在では、栗東からは新潟、福島、小倉のローカル開催が守備範囲です。中京開催はそれこそ自分の庭のようなものですね。東京、中山という選択肢も当然ありますから、おおむね常に全場のレースから選択することができます。

ところが美浦の場合、小倉への輸送は20時間以上かかります。土曜のレースだと木曜の出馬確定を待っていられません。出かけたはいいが除外された、そんな事態も起こります。遠征に割かれる厩務員さんなど人手の問題も含めリスが大きい。一時的なことと割り切ってすむ問題ではないでしょう。新馬除外ラッシュの次には未勝利戦のそれが待っているのですから。

馬主さんは1%の例外もなしに経済的な損得を抜きに愛馬が元気に走る姿を見たくてオーナーになった方々です。それが出走の機会すら剥奪されるのでは理不尽というものでしょう。“西高東低”と言われて久しいのですが、実はこの現象、モータリゼーションの発達が微妙に影響しているのでは?

栗東は坂路など調教施設で常に一歩リードしてきたとか、輸送に敏感な牝馬の重要レースが西に偏在しているとか、いろいろな要因が複雑に絡み合っているのでしょうが、出走機会の獲得のしやすさというのも大きいのでしょう。大手馬主さんを中心に栗東預託が増えるのは自然の成り行きです。しかも素質馬、期待馬ほどそうなるのは仕方がないですね。

でも日本の競馬を支えている個人馬主の皆さんは、自分が応援に行ける場所で走ってほしいと思っています。日本に10団体ある馬主協会に所属する方々のほぼ半数近くが東京と中山の馬主協会の会員だという事実をどう見るか?遠い栗東に預けるなら馬主をやめる、そういう個人オーナーさんも少なくないと思います。

時の経過に任せてすむ一過性の問題ではなく、競馬そのものの存続の危機、その芽が不気味に育ちつつあります。馬主のいない競馬って、そもそも成立しないのですから。

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