きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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近年の菊花賞は持久力のみならず瞬発力も要求されるサンデーサイレンス向きのレースになっています。その開祖が96年に上がり33秒8の鬼脚で後方一気に差し切ったダンスインザダークでした。その産駒がこの10年で3頭の勝ち馬を輩出するなど、近代菊花賞への適性は半端じゃありません。

その流れに逆行するようにタフな消耗戦を勝ち抜いたのが、02年の菊花賞馬ヒシミラクルです。

この馬の履歴ほどクラシック馬に似合わないのも珍しい。夏の小倉デビューとまずまずの仕上がりを見せていたのですが、走っても走っても勝てず、なんと9連敗を喫します。やっと勝ったのはダービー当日の裏開催、中京未勝利でした。秋に菊の大輪を咲かすなんて誰にも想像できません。

ところが有力馬の引退や出走回避などでなんの拍子か菊出走がかなってしまいます。ダービーの日に未勝利戦を走っていた馬がクラシック出走とは、競馬の神様はイタズラ好きなのでしょうか。

この年、競馬の神様は度がすぎるほどイタズラ好きでした。先ほど述べたようにダービー馬タニノギムレットは引退、ダービー2着でトライアル神戸新聞杯を勝ったシンボリクリスエスは天皇賞路線を選びます。押し出されるように1番人気になったのは皐月賞馬ノーリーズン。しかしゲートが開いた途端、武豊騎手は落馬してしまいます。大波乱の幕開けでした。

ハナを奪ったローエングリンは大逃走を試みます。テンの2ハロン目が10秒5の超高速ラップ、おそらく菊花賞のハロンレコードでしょう。テン3ハロンが34秒台というのもちょっと珍しいハイペースです。一度ついた勢いはなかなか緩みません。2週目の向こう正面でようやくペースダウン、と思ったら、とんでもない展開が待っていました。

さて、競馬の神様、今度はどんなイタズラを仕掛けたのか。このつづきは明日お届けします。どうぞよろしくお願いします。

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