きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

2週間ぶりの競馬開催の土曜日、いかがお過ごしでしょうか。

人々の価値観みたいなものが変わってきたように感じます。以前から地下水脈のように日本社会に流れていたのでしょうが、今回の震災でかなり表面化してきたのではないでしょうか。

たとえばリーダーシップのあり方もそうした一つです。プロ野球セリーグの“強行開幕”なんかに典型的なのですが、従来は指導的というか支配的というか、それぞれの分野でリーダーシップをとってきた人たちの言動がなんだかピントはずれで世の中の空気とはかけ離れて感じられ、逆に若い方々の発言が実に的を得て正論に思われます。

より多くの利益を集めて、それを分配してくれる人が長い間、リーダーとして尊敬されてきたように思います。狩猟や農耕で生活を立ててきた大昔からそうでした。共同体(業界)を守るためにリーダーが必要とされてきました。『まぁ、いろいろあるが、とにかく開幕しよう』という論理は、自らが属する共同体(業界)の利益を最優先するいわば“巨きなリーダー”の発想でしょう。

しかし今の利益やその分配も重要には違いないが、それがすべてじゃないだろうと考え始めた人が出てきました。50年先、100年先の利益や価値は考えなくていいのか、と。隣りの集落が異国のように思われ、実際に自分の集落の人間の顔しか知らないまま生きていた時代から、好むと好まざるとにかかわらず日本はおろか世界中が密接に繋がってしまった21世紀の舞台では、目先の自己利益にとらわれていると、居場所すらなくすことになりかねないと考え始めたのです。

“巨きなリーダーシップ”に身を委ねられなければ、自分が自分の“小さなリーダー”として振舞わなければ、そんな思想の小さな芽があちこちで生まれつつあります。財政難から破綻に直面したホッカイドウ競馬では、調教師や騎手などスタッフ一人一人が“小さなリーダー”として難局に臨むことで危機を克服してきたと聞きます。この震災で親方日の丸的なリーダーシップが変わるのもしれません。

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