きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

風に運ばれた桜の花びらが舞う1コーナーポケットから風光る急坂に殺到するクラシック三冠への第1完歩、第2完歩。サラブレッドたちがもっとも美しい瞬間かもしれない本当に大事なレースです。

残念です。3月に続いて4月も中山競馬場での開催が中止され、皐月賞も東京に移設されることが決まりました。お江戸の初夏を告げる浅草三社祭もなくなった今年です。夏の大イベント・東京湾大花火も早々と中止されました。起きていることは、それほど重大なのは間違いありません。仕方がないといえば、仕方がないのですが、残念です。

大昔の話です。テレビの深夜番組かなんかで観た記憶しかないのですが、伴淳三郎さん、花菱アチャコさんの名喜劇俳優コンビの人気シリーズに《二等兵物語》という映画がありました。世の中の無理難題をサラッと受け流し健気に生きる庶民の物語です。

その中で二等兵が靴の支給を受け、靴が小さいと不平を漏らすと足に合う靴を求めるのではなく靴に足を合わせろ!そう上官に一喝されます。そこでアチャコさんが《無茶苦茶でござりするまがな》と定番のギャグに落として笑を取るのですが、庶民にとっては、なんだか身につまされるお話です。

クラシックや古馬重賞戦線も大変ですが、中山、福島の開催中止で何十頭という馬たちが勝ち上がりの機会を失っています。競馬の世界の“二等兵”、未勝利馬を含む下級条件馬にはなんとも《無茶苦茶でござりするまがな》な時期になっています。

×