きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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昨日の名古屋、かきつばた記念にラブミーチャンが登場しました。可愛らしい馬名と小気味の良い逃げ脚で人気のある馬です。久しぶりでプラス16キロと万全ではなかったようですが、例によって逃げまくり中央馬相手に3着と健闘しました。体質が弱いのか使い込めないのは父サウスヴィグラスと同じです。でもヴィグラスは6歳になって充実、晩成の快速馬でした。4歳のミーチャンにはまだこれから成長の余地はあると思います。ファンの多い馬です。ぜひ頑張ってください。

さて、ヨーロッパの一流調教師、トップジョッキーを某然とさせた強すぎる2000ギニー馬フランケルのお話の続きです。

愛犬の名をもらったみたいな馬名なのですが、実はリスペクト(尊敬)とオマージュ(献辞)の物語だと知りました。オーナーはご存じのようにカリッド・アブドゥーラ殿下です。ダンシングブレーヴがあまりにも有名なのですが、現在、世界でもっとも影響力を持つオーナーブリーダーの一人です。

ご承知のように殿下はジュドモントファームなど超有力牧場をケンタッキー、ニューマーケット、アイルランドに展開しています。そのアメリカ担当ゼネラルマネジャーともいうべき人物がボビー・フランケル調教師でした。

彼は1シーズンのG1を25勝するなど前人未到、あのクールモアのレーシングGM格のエイダン・オブライエン師すら到達し得なかった不滅の記録を樹立しています。

2009年、フランケル師は白血病に斃れ帰らぬ人となります。1歳のガリレオの息子に尊称を冠することに迷いはありません。偉大な業績への尊敬、ジュドモントへの多大な貢献への感謝の念が愛情をこめて“フランケル”と名付けさせたのでした。このとき調教師フランケルの魂が馬のフランケルに乗り移りました。日本で言えば、オガタ(尾形藤吉師)とかブンゴ(武田文吾師)、ユウジ(野平祐二師)みたいな馬名になります。

ビジネスライク一辺倒に思われがちな欧米競馬界ですが、こうした泣かせる“人情話”はけっこう普通にあったりします。捜せば日本にもたくさんあるのでしょうが、不勉強の報いなのか、なかなか伝わってきません。そういう“ちょっといい話”をこのコラムでお伝えできたらいいなぁと願っています。

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