きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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今日のチャーチルダウンズ競馬場はケンタッキーオークスですね。一昨年はレイチェルアレクサンドラが20馬身余りの大差勝ち、その後もケンタッキーダービー馬やベルモントS馬を倒して、世代最強を証明、遂にはゼニヤッタとの年度代表馬争いも制します。連戦連勝とはいえ牝馬ばかりが相手だったゼニヤッタに対して、牡馬をなぎ倒したのが大きなアドバンテージになりました。

残念ながら今年はそんな傑出馬は見当たらないようです。というのも、6戦6勝の2歳女王オーサムフェザーが戦線離脱し、BCジュベナイルフィリーズで彼女に続き、今季も2連勝中と上昇中だったアールヒートライトニングまでいなくなったからです。

そんな混戦模様の中で浮上してきたのがザズという馬です。オーナーは音楽プロデューサーのジェリー・モスさん。ゼニヤッタの馬主さんとしても有名な方ですね。彼は友人のミュージジャン・ハープ・アルパートさんと共同でA&Mレコードを興して大成功するのですが、そのレーベルに“幻の名盤”ともいうべき1枚のレコードがあります。

1980年代にスーパーモデルの先駆けとして脚光を浴び、女優としても活躍したロージー・ヴェラという女性がいます。写真を見てもエキゾチックでミステスリアスな魅力があります。才色兼備、何足ものわらじを履きこなした彼女にはもうひとつの素晴らしい可能性が秘められていました。シンガーソングライターとしての稀有な才能です。そして彼女はA&Mから生涯たった1枚のアルバムを出します。そのタイトルが《Zazu》というものでした。

ゼニヤッタもロスさん自身のヒット曲から名付けられていましたが、ザズの馬名はその名盤に由来しているのでしょう。さて、ザズは7戦2勝2着4回と勝ち切れない印象がありますが、注目すべきはロージー・ヴェラさん同様の多芸多才ぶりです。なにしろオールウェザー、ダート、芝とすべてのカテゴリーで使われて底を見せていません。前走はダートのサンタアニタオークスでクビ差2着でしたが、その勝ち馬タービュラントディセントも今度は出てきません。

モスさんが思いをこめたザズが名盤Zazuのようにチャーチルダウンズで多彩な才能の一端を花開かせるのでしょうか。こういう楽しみがあるから馬主はやめられませんね。

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