きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

歌人“京雅”さんからの和歌(沓冠) 秋華賞

10月22日は、池添 兼雄 調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
先週は、牝馬クラシック最終戦・秋華賞(GI)が行われました。ご存じの通り、史上初の無敗の牝馬三冠馬誕生なるかに注目が集まった一戦、その期待に見事、デアリングタクトが応え優勝しました。ゴール板を駆け抜けた際には拍手も沸き起こり、歴史の一ページが刻まれた瞬間となりました。覆面歌人の京雅さんからは、その秋華賞の和歌が届きました。是非、隠れたメッセージを読み解いてください。(メッセージの答えは最後に)

秋華賞 京雅

無比なのさ
花は爛漫
いざ秋華
出たよ断然
伸び行く牝馬

隠れたメッセージは「むはいでの さんかんば → 無敗での 三冠馬」です。
さ()あ跳ばせ(
リ()ードし強い(
追()えば越え(
す()べて万全(
虹()を渡るよ(


<京雅さんの和歌【沓冠】の解説>
今年の秋華賞は例年と異なった雰囲気で行われました。ひとつは、春から続いて無観客競馬がようやく終了し、一部のお客様の入場が可能となりましたが、満員のお客様で迎えるGIとならず、まだまだ寂しい競馬場という点。もうひとつは、史上初、無敗での牝馬三冠馬の誕生がかかった一戦であるという点です。
偉大な記録に挑んだのは7枠13番デアリングタクト。春の二冠・桜花賞とオークスでは初の重馬場や初の左回りといった課題も難なく克服し、無比の強さでタイトルを奪取。まさに“花(デアリングタクト)は爛漫”の状態でいざ、秋華賞に駒を進めました。
ここでの課題は約5か月ぶりとなる休養明けのローテンションでしたが、オークス優勝直後から、予定通りで選んだローテンションでもあり、秋華賞でも無比の強さで敵はいませんでした。道中は中段で脚を溜め、直線入り口では外目から先行馬に並びかけます。ラスト200m付近で逃げ馬を捕らえると、“出たよ断然”の如く、そこからさらに加速し、ゴール直前では追う手綱を緩める余裕も見せ、先頭でゴールしました。
ここでも、“花は爛漫”という句が生きてきます。この“花”はハナ(先頭)でゴール板を駆け抜け爛漫という意味と、秋華賞の“華”を制したデアリングタクトが爛漫、という意味が隠れております。
史上初の偉業を達成したデアリングタクトには、この日、指定席の抽選が当たった幸運なファンの拍手喝采が贈られ、また松山弘平騎手の安堵した表情も印象的な一日でした。

デアリングタクトを無敗での牝馬三冠に導いた松山弘平騎手、杉山晴紀調教師、いずれも30代という若さでの快挙。今後は古馬との対戦になりますが、ローテンションも含めて期待が膨らみます。
そして、今週末はいよいよクラシック最終章・菊花賞(GI)です。コントレイルが三冠を達成すれば、デアリングタクトに続き、同一年、二週連続で三冠を目撃することになります。競馬史に残る快挙が続くのか、はたまた、ライバル馬の大逆襲か。今週も世紀に残る一戦を見届けましょう。


※ 【沓冠】の解説
和歌の折句の一種。意味のある10文字の語句を、各句の初め(冠)と終わり(沓)に1字ずつ詠み込んだもの。「沓」とは、体の一番下に着けるもので、「冠」とは、一番上に着けるものであることから、「沓冠」といわれる。 平安貴族の「言葉遊び」で、短歌の中に、本文とは違う言葉を忍び込ませて、和歌の表面とは違ったメッセージを密かに伝えているところが、面白いところ。

※歌人“京雅”さん
長く競馬サークルに住みついている覆面歌人。本年から、当協会ホームページで連載開始。渾身の一首をお届けするので皆さんも、是非、謎解きに挑戦してください。

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