きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

鎖国競馬への危惧

ようこそいらっしゃいませ。

毎年この時期は、華やかなドバイワールドカップデーに始まり、オーストラリアのザチャンピオンシップシリーズ、香港のチャンピオンズシリーズと海外遠征で盛り上がるのですが、ご承知のようにドバイは開催中止。オーストラリアも先行きの見えない中で、海を渡ったのは結局ダノンプレミアム1頭だけ(結果は、残念にも極悪馬場で伸び脚を欠き3着止まりでした)。来週に予定されている香港も日本馬を含めて海外からの遠征馬はゼロで、香港在籍馬だけで行われます。世界中がいっぺんに扉を閉じて、鎖国時代に戻ったかのような状態です。

競馬ができるのは、まだ良い方で、アメリカでは普段はゴールデンウィークからの5週間に集中して挙行される三冠レースが9月に延期されました。ヨーロッパはイギリス、アイルランド、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなど枕を並べて開催自体が全滅状態。伝統の英ダービーなどクラシックレースの延期が続々と発表され、この先の日程も決まっておらず不透明なままです。行き場なし?競馬史上最大のピンチかもしれません。

これまでは大馬主や大手厩舎などは所属馬を国内レースと海外遠征、海外もヨーロッパ、オーストラリア、香港、アメリカと幅広い選択肢を慎重に検討して使い分けて来ました。ところが競馬が鎖国状態になると、国内レースに集中せざるを得ません。一時的に国内レースのレベルが上がることは間違いがないでしょうが、長い目で見れば日本競馬や日本馬の価値は下落することになりかねません。「井の中の蛙」や「お山の大将」が広い世界から評価されることはないからです。競馬は長い歴史の中で、世界性を獲得して来た稀有なスポーツです。世界性こそが、競馬の価値の源泉であり、譲れないアイデンティティだと思います。大変なときですが、ホースマンが力と知恵を合わせて、世界競馬の未来図を構想しなければならいでしょう。

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