きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

カルティエ賞

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ヨーロッパでは平地シーズンが終わり、今週は1年を締めくくるカルティエ賞の授賞式が行われました。各部門のチャンピオンに君臨したのは下記の通りですが、この中から年度代表馬が選ばられます。
最優秀2歳牡馬:ピナトゥボ(チャーリー・アップルビー厩舎)
最優秀2歳牝馬:クァドリラテラル(ロジャー・チャールトン厩舎)
最優秀3歳牡馬:トゥーダーンホット(ジョン・ゴスデン厩舎)
最優秀3歳牝馬:スターキャッチャー(ジョン・ゴスデン厩舎)
最優秀古馬:エネイブル(ジョン・ゴスデン厩舎)
最優秀スプリンター:ブルーポイント(チャーリー・アップルビー厩舎)
最優秀ステイヤー:ストラディヴァリウス(ジョン・ゴスデン厩舎)
そして年度代表馬にはエネイブルが選ばれました。道悪で厳しい消耗戦となった凱旋門賞こそ惜敗しましたが、ハイレベルだったキングジョージ6世&クイーンエリザベスSなど他のレースでは底力に富んだ強いレースを見せてくれました。総合点で一歩抜けていたということでしょうか。

厩舎別にはジョン・ゴスデン調教師が、一昨年のエネイブル、昨年のロアリングライオンに続いて3年連続で年度代表馬を送り出したばかりか、3歳勢は独占、超長距離のストラディヴァリウスも2年連続受賞!ランフランコ・デットーリ騎手との深い信頼の絆に結ばれ、優秀なスタッフを取りまとめて充実し切った素晴らしい厩舎力を天下に示しました。チャーリー・アップルビー調教師は今や大馬主ゴドルフィンの主戦ステーブルとしての地位を固めつつあります。ウィリアム・ビュイック騎手のアシストも大きくモノを言っています。名スプリンターのブルーポイントは引退して種牡馬になりましたが、2歳時のレーティングで怪物フランケルを超えた6戦6勝のピナトゥボがクラシックに臨む来春は、どんな走りを見せるのか楽しみしかありません。

馬主別で見ると、エネイブルとクァドリラテラルのオーナーブリーダーで名門ジュドモントファームを率いるカリド・アブドゥッラー殿下は、これまでもフランケルで2度、そしてキングマンとエネイブルで年度代表馬に輝いており、今回で5度目のヨーロッパチャンピオンを戴冠しました。この誇り高い大オーナーは、来季も愛馬エネイブルを現役として走らせてくれます。ファンにとっては感謝しかありませんね。モハメド殿下のリーダーシップの下、様々な制度改革を経て往時の栄光を完全に取り戻しているゴドルフィンは今季も絶好調でした。ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカ、そして日本のタワーオブロンドンのスプリンターズSも含めてG1勝利は27勝。ライバルのクールモアはエイダン・オブライエン厩舎が16勝にとどまりましたから大きく水をあけた格好です。

父系血統別には、上表のピナトゥボから順にシャマルダル、フランケル、ドバウィ、シーザスターズ、ナサニエル、シャマルダル、シーザスターズとなっています。目立つのはシャマルダルの奮闘ぶりです。ストームキャット系ジャイアンツコーズウェイの血で、亡くなったディープインパクトと同い年ですから年が明ければ18歳。でもゴドルフィンのプライベート種牡馬として大事にされて、ますます勢いを増しています。3歳陣はピナトゥボ意外にも無敗のG1馬がゴロゴロしており、来春のクラシックはヨーロッパ各国で使い分けられ、ロイヤルブルーの勝負服の独壇場になるかもしれません。種牡馬界の帝王ガリレオは、今季G1勝ち馬84頭、通算勝利数175勝と歴代最高記録を更新し、10年連続で11回目の英愛リーディングサイアーを獲得するなど威勢にまったく衰えは見られません。しかもナサニエル、フランケルがカルティエ賞受賞馬の父に君臨するなど「サイアーオブサイアーズ」としての勢力拡大が目立ち、2020年代は実績に乏しい日本は除いて全世界がガリレオ系一色に塗りつぶされるのかも。

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