きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ルーティンの女王

4月12日は、鮫島一歩 調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

32連勝中で内G1レースを24勝と想像を超える大記録を樹立して来たサザンクロス(南十字星)の女王ウィンクスが、明日のランドウィック競馬場で行われるG1クイーンエリザベス2世Sでラストランを迎えます。ハートネル、ハッピークラッパーといったウィンクスの前に2着の山を築き、女王がいなければさらにG1勝利数を上積みできたはずの悲運の実力馬たちが別れを惜しんでゲートインします。日本からはドンカスターマイル4着から連闘でクルーガーが送別の宴に参戦します。

ウィンクスの際立った個性は、海外に出かけることもなく国内に専念して毎年ほぼ同じようなレースを使われ続けて来たことに見られます。オーストラリア中距離G1の最高峰コックスプレートを筆頭に、マイルのチッピングノートンS、ジョージライダーSをいずれも4連覇を果たしています。明日のクイーン・エリザベス2世Sでも3連覇を目指すことになります。特徴的なのはレース内容も常に後方からじっくり進み、強烈な捲り脚を一閃させて直線で抜け出すというウィンクス・スタイルを貫いています。とくにコックスプレートが開催されるムーニーバレー競馬場は、直線わずか170mにもかかわらず、もはや芸術の域にまで達した捲り戦法を貫きました。「ルーティンの女王」と言えそうです。ルーティンというと平凡さと紙一重に感じるのですが、彼女の場合は「偉大なる平凡」でした。

この「ルーティンの女王」に辛抱強く付き合ったクリス・ウォーラー調教師、ヒュー・ボウマン騎手の、とくに精神的な苦労は並大抵ではありませんでした。毎回異なった条件に挑戦するのも大変ですが、ルーティンを繰り返すのはもっと大きな心労に襲われるでしょうから。クイーンエリザベス2世Sの英国ブックメーカー大手のウィリアムヒル社は1.07倍と極限のオッズを提示しています。2番人気のヒーズエミネントが15倍、3番人気のハッピークラッパーが17倍、クルーガーは9頭立ての7番人気で41倍をつけています。世界中が女王の「ルーティン」に期待を寄せ、熱い視線で注目しています。

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