きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

中山を彩った名馬たち【51】オルフェーヴル 2013年12月22日 第58回有馬記念

――これが最後。
毎年6000頭を超えるサラブレッドが誕生する中、「これが、ラストラン!」と銘打ってレースに出走できる馬は数えるほどしかいない。ましてそれが、日本ダービーと双肩しても引けをとらない中山を舞台にした有馬記念ということになるとなおさらだ。
選ばれし16頭によるドリームレース――。
シンザン、オグリキャップ……かつてこの有馬記念で有終の美を飾った名馬中の名馬に並ぶべく、偉業に挑戦したのが、2013年のオルフェーヴルだった。

「オルフェーヴルのラストランを見に行こうぜ!」
伝説の最終章を見届けるべく中山に集ったのは、12万4782人。熱気が渦巻くスタンドは、レース前からオルフェーヴル一色に包まれていた。
――負けるなんて考えもしない。
見たいのは、ただひとつ、オルフェーヴルの最後の勇姿のみ。
ルルーシュが敢然とハナを切り、カレンミロティックが2番手を確保。有力馬がそれに続いても、ファンはいつものように後方に控えるオルフェーヴルの走りだけをジッと見つめていた。
そして――レースが動いたのは3角手前。池添謙一のGOサインに鋭く反応したオルフェーヴルが、一気にスパート。「早すぎるんじゃ?」というスタンドのどよめきをものともせず直線入口で先頭に立ったオルフェーヴルは、そのまま後続を大きく突き放すと、最後は8馬身差をつけ、栄光のゴール板を駆け抜けた。
「僕は今でもオルフェーヴルが世界で一番と良い馬だと思っています」
レース後、そう語った池添とオルフェーヴルに、スタンドから惜しみない拍手と歓声がシャワーのように降り注いだ――。

今年、この有馬で、ラストランを迎えるのは……サトノダイヤモンド。たとえ一瞬でもいい、かつての輝きを取り戻して欲しい――そう願っているファンは多いはずだ。

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