きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

チーム仕事人

ようこそいらっしゃいませ。

今年の凱旋門賞、大本命エネイブルが見事な横綱相撲で圧勝、史上7頭目の連覇を達成しました。管理したジョン・ゴスデン調教師は3勝目、手綱を執ったランフランコ・デットーリ騎手は6勝目、オーナーブリーダーのカリド・アブデューラ殿下は名門ジュドモントファームの所有者でもあり、“チーム仕事人”が本当に仕事人らしい仕事を成し遂げました。

今季は脚部不安で使い出しが遅れに遅れ、競馬場に姿を現したのが先月8日のこと。11ヶ月ぶりの実戦で、アールウェザー馬場という慣れない環境下での競馬になりました。しかし休み明けの不利をモノともせず、キングジョージでクビ差2着の強豪クリスタルオーシャンを3馬身半突き放して復活の狼煙を上げています。フィジカルの強さはもちろんですが、メンタル面の強靭さに舌を巻かされます。そこから凱旋門賞まで1ヶ月、ゴスデン師のレース後の告白によれば、中間エネイブルは熱発して調教を手控える日もあったとか。それでも辛抱強く仕上げて晴れ舞台に間に合わせ、しかも勝たせる師の手腕は並ではありません。「ジョンは天才だ!」と相棒のデットーリ騎手が最大級の賛辞を贈るのもモットモです。エネイブルはデットーリ騎手が語る通り、楽々と先行できるスピードがあり、道中では思うがままに折り合える賢さを持ち、直線で追われて鋭く伸びる切れ味を秘めています。理想のサラブレッドといって過言ではないでしょう。

日本馬は完敗でした。エネイブルのような馬にどうしたら勝てるのか?改めて壁の高さや厚さを思い知らされました。軽量の3歳牝馬が有利とか、道悪巧者にチャンスありとか、そうしたタクティクス(戦術)の問題ではなく、速くて強い馬づくりをどうするかの本質的な課題が問われているように思わされました。日本ホースマンの挑戦は続きます。

×